ぼくなつ2とクレしんを好きな人が「オラ夏」をプレイした感想
「クレヨンしんちゃん『オラと博士の夏休み』〜おわらない七日間の旅〜」をやった感想です。結論から言います。
微妙でした。
全てが悪いわけじゃない、
終わりはちょっと良かったけどそれだけ。
終わりだけを目標にやる価値はあるのかっていうと…。
いろいろ足りないゲームでした。
以下詳細。
ネタバレは微ネタバレと根幹のネタバレで分けており、直前に注意書きがあります。
【私が期待していたもの】
後述の不満点に通じはするんですが興味なかったら読み飛ばしてください
《ぼくなつ要素に関して》
タイトルの通り自分はぼくなつ2にハマっていた人間です。
シリーズの他作品も少しやったのですが、記憶に残っているのが2だけなのでぼくなつのファンというより2のファンです。
公式サイトに「『ぼくのなつやすみ』シリーズ監督が贈る新しい冒険物語!」と記載があったので、ぼくなつのファンがハマるような作品になっているのかな、と思いました。
ぼくなつ2の何にハマっていたかというお話なんですが、
・ストーリー
・自由度の高さ
この2点がぼくなつ2の個人的な評価ポイントでした。
夏休みを自由に過ごし、その合間に紡がれる住民たちとの交流。
そんな淡い感じがとても好きです。
自由度の高さというのはストーリーにも絡んでいて、極論ぼくくんが住民らに絡まなくても彼らは各々行動するし、夏休み中ぼくくんがずっと虫取りしていようがEDは迎えられます。
だからこそ好きに絡みに行って住民らのいきさつを眺めたり
話すことで彼らの考え方を知ることができるのがすごく好きでした。
《クレしん要素に関して》
クレしんの映画は「泣ける映画」として評価が高い作品も多いです。
ぼくなつ2が感動的なストーリーだったので、いい感じにしんちゃんの要素を活かして感動的な「夏休み」が描かれることを期待していました。
【不満点】
あまり面白くないと思った要素を端的に
・キャラが淡泊
・自由度が低い/義務感が強い
・微妙なストーリー
《キャラが淡泊》
キャラがおもしろくない。
毎昼、毎夜みんなほぼ同じところにいるし話もほぼ同じ。
まったく同じ話ではないけれどほぼ同じテーマで話してきます。
個人に役割も感じません。ただの舞台装置。
某3人とか舞台装置感が半端なかったです。
例えばぼくなつ2なら、下宿先のおばちゃんは家事をしているので
朝は洗濯物を干していたり、夕方は台所で料理をつくっていたりと
時間による違いがあります。
オラ夏では昼間、
キャプテンと美子おねいさんは会社で仕事、
カズマとキネは庭で遊んでいて、
みさえはテーブルを拭いています。ずっと。
カズマとキネなんかは毎日一応違う話をしてくれるけど誤差の範囲。キャラクターが生きてる感じが薄いです。
あとセリフの心象がよくないキャラも。
モットは何も買わないと「いいかげんにしろよ~」と言ってきます。
初めて話しかけたとき(所持金0円で何も買えない)びっくりしました。
冷やかしはやめろよ~って程度なんだろうけど
最初がこれってだけでかなり印象悪くなりました。
5歳児相手にこれか。
ヨヨコは話しかけるとおつかいの評価をしてきます。
雑談したいだけなのに何回も評価されるのはあんまり嬉しくないですね…。
自由な夏休みを過ごしたいだけなのに「もっとお手伝い頑張って」って言われたくなかったです。
食材集めるのことに対して後ろ向きなのでなおさら。
《自由度が低い/義務感が強い》
これらの要素はぼくなつをやっていたからこそ気になる点だと思います。
なので、はじめてやった方としてはあまり問題じゃないかも。
このゲーム、マップが狭くできることも少ないです。
探索を楽しもうと思っていましたが2週間目には野菜を育てる事しかやることがなくなりました。
初っ端からやることがないので、夏休み開始直後に虫取りや魚釣りをやりまくったらどちらもすぐに飽きてしまいました。
ストーリーに関してはプレイヤーが関与する要素がないのにしんちゃんは関与する、一本道で必然性の薄い強制イベントが多く、感情移入があまりできませんでした。
ぼくなつの好きな要素でもあげましたが、ぼくなつはぼくくんがいなくてもイベントは進むんですよ。
じゃあオラ夏はどうかというと、プレイヤーが任意で関与するケースやプレイヤーの行動がストーリーに及ぼす影響が少なくて気持ちが置いてけぼりになりました。
サブイベだとフラグを踏まないと発生しないものがありましたが、「しんちゃんの行動のおかげでイベントが進展した」というカタルシスもなにもなかったです。
また、全体的に義務感が強いです。
自由な夏休みを謳歌するイメージだったのですが、「目標」や「おつかい」がそれを阻みます。
冒頭で述べた通り「住民と交流しようが虫を取ろうが新聞を作ろうがなにもかも自由な夏休み(+感動的なストーリー)」を期待していたのですが、いくつかの要素に関してはがタスクとして消化が必要となってしまいました。
きままに虫や魚を取っている間は楽しいのですが、義務化されるととたんに面白くなくなります(私に関しては期待値の高さも相まっていたので、万人がそう思うとは考えていません)。
ストーリーが時間経過か目標達成なのかわからないから余計に義務感が強い。「やること」はないけど「やらなきゃいけないこと」が多い。
目標に関してはそうかもしれないけど、おつかいはやりたくないならやらなきゃいいんじゃね?と思う方もいるでしょうが、一部の登場人物と会話するとおつかいの進捗を確認されるんですよねこれが。
遊びのついでで手伝ってくれたらありがとう!
ではなく
もうちょっと手伝ってもらいたいんだよな~
というノリで会話します。
自由気ままな夏休みはいずこ…。
もちろん目的があったほうが楽しくやれる方もいると思います。
しかし、ぼくなつのイメージが先行していたので、放任主義だったぼくなつと比べると煩わしいと感じてしまいました(あっちはお小遣い稼ぎも任意だし、肩たたきをするとめっちゃ褒めてもらえる)。
《微妙なストーリー》
トレーラーを見た際はSF(すこしふしぎ)的な、
マジックリアリズム的な作品を期待していました。
ここもっとこうならなかったのかな〜ってポイントです。前述の要素と重複あり。
・キャラが舞台装置で個人の掘り下げがない
・描写が粗い
・物語の構造に意味がない気がしてならない
・ラストを踏まえてのストーリーに関する総括
総括の部分にはよかった点もちょっと書きました(ネタバレがあるのでここにねじこんだ)
以下若干のネタバレーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(プレイ中のメモを参考にした感想)
<キャラが舞台装置で掘り下げがない>
キャラが淡泊の項目でも書きましたが
キャラの掘り下げがないんですよね。
三郎はヨヨコと両片思いってだけ(永遠に出前頼んでろ)、
二郎はモットの気になる相手でバーをやっている、
モットは商品売ってくれる、
美子は初見のインパクトこそあれど延々とのぞき見してる
(しんのすけの最終目標ではあるけれど)。
それだけ。
ここから成長するなり発展するなりなんもないんだな。
本当に役割を振られただけという感じが否めないです。
かすかべ防衛隊に似たあの子たちも出す必要あった?仲間と困難を乗り越えて仲を深めたり個人が何かを乗り越えて成長するところが見たかったです。
映画クレしんは目標や目的がハッキリしていたし成長もえがかれていたのでこの作品でもそういったのを期待していました。夕陽のカスカベボーイズなんかかすかべ防衛隊が仲を深める過程含めてすごく好きなんですけどね…。
ループしてるから成長しないのもしょうがないか。
<描写が粗い>
素人ながらこういう描写飛ばしちゃっていいの?って思うことが多かったです。
一番驚いたのが「あくの博士と少し仲良くなった」というシーン。
(一応)敵同士だったキャラと和解するシーンってすごく大事だし、あくの博士の実態も正直よく理解できていなかったので、彼の人間性なり考えなりを理解できるシーンがきた!と思いきや
「こうしてしんちゃんは、あくの博士と話をして少し仲良くなりました」
終了。
嘘だろ!?こういうとこの具体的なシーンや描写を積み重ねて、あくの博士が憎めないキャラみたいになっていくんじゃないのか!?
どういう話をしてしんちゃんがどう思って仲良くなったかってすごく大切だと思うんだが!?
掘り下げの話にも繋がりますが人となりがわかりそうなシーンを省かないでほしかったです…。
また、プレイヤーである私が共感(感情移入)できなかった要素として恐竜があります。
恐竜に対して、中盤に登場キャラクターの多くが「恐竜は意外とこわくない!」というのですが、プレイヤーとしては恐竜に踏まれそうになったりするし通行妨害されるし安全だとは思えないんですよね(悪意はないっていうのは川でおぼれた子を助けたりしているんで理解はできますが)。
で、逆に肉食竜が出てきた際は「怖いかも」っていうんですが、みんながみんな手のひらクルーするだけの理由がわからない。
いやまあ確かに肉を食べるって言うのは怖いけど。今までは愛着持ってたじゃん。急にみんなして怖いっていうだけのなにかあった?って思いました。
恐竜が怖くないっていうなら「踏まれるなよー」ってひろしの言葉はいらないし、進行を妨害するような描写もいらない。
みんなの意見を一致させるなら、全員がそう思わざるをえないようなイベントを用意するべきでは、と思いました。
<物語の構造に意味がない気がしてならない>
SF…というよりマジックリアリズム的なものにする必要性あった?
エンドレスエイトがやりたかっただけ?
中途半端なリセットあるからキャラの掘り下げができないってなってない?
しかもいろいろ解決しないで終わるし。
「オラと博士の夏休み」ってタイトル的に
ループしていることを知っている2人の物語って感じにしたかったのかな。
それならそれで博士がどんな人か、などそういう描写をもっと増やしてほしかったと思います。
この人も「悪いやつにおもわれたい」っていうだけで、行動の動機を口頭でいわれてもなあ。
原作のクレしんでしばしばネタとして使われていた「出た!なぜか説明口調!」をネタじゃなくナチュラルにやっている気がします(原作に関しては導入をすっ飛ばすために使われていただけなので、ギャグとドラマじゃ使用感が違うと思うし)。
<ラストを踏まえてのストーリーに関する総括>
ゲームの根幹に関わるネタバレーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
(ラスト等を踏まえての感想)
唐突な「実はタイムスリップしていたのではなくパラレルワールドだった!」
へー以外の感想がない。見逃している可能性はあるのですが布石も伏線も特になかったのであっそーとしか思いませんでした。
もしかして地名ってプレイヤーの感想から来ているのか!?
あとパラレルワールドならそれはそれで、本来別次元なためにお別れが確定している世界ではぐくむ友情みたいなのも描けたんじゃないかなあ。
つばきちゃんかわいかったよね…。
というかパラレルワールドって単語を出しておいてラストで全部ぶん投げてるのなに…?
並行世界の存在は?しんのすけの記憶によって生み出されたアッソー防衛隊って何者なの?この世に存在していていいの?腑に落ちない
あと最後までキャラが舞台装置だったね…。
カップル3組用意するためだけに用意された人たちよ…。
キャップは常識人かと思ったのに即女子大生と付き合っちゃうところに幻滅した。
数日前まで恋心にすら気づいていなかったのに、自分の娘より若い子とそんなすぐに付き合えるのか。
歳の差恋愛を否定するつもりはないのですが、「良識のある大人」なら貴重な若い頃の時間を奪ってしまうのではないか、恋心を錯覚しているだけではないのか、といった葛藤はあると思うんですよ。
なんならそこが歳の差の見どころでもあると思うのにキャップお前…。
博士が最終的にみんなの輪に加わるところは普通によかったです。
ここは本当によかった。
みさえとひろしの「大人な対応」が見られてほっこりしました。こういうのが見たかったんだよ。
ただ博士自身のことに関しては相変わらずの「なぜか説明口調」。
ひろしとみさえが博士の人間性(行動理由がさみしかったこととか)について察するシーンとかあったらよかったな~。
ヨヨコとララコが仲直りするところもいいっちゃいいんだけど、それまでの積み重ねが薄味でした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーネタバレ終わり
【おわりに】
ぼくなつ2みたいなのを期待していた結果がっかりしてしまいました。旧作品への思入れが強すぎました。
ぼくなつを期待していると、やれることの少なさや強制感、ストーリーの粗さがかなり気になるゲームとなっています。
しかし、公式も公式でぼくなつに寄せて旧作のファンの購買意欲を煽ろうとしていた感は否めません。
公式サイトに「ぼくなつ監督が」との記載もありましたし、端々にぼくなつらしさ(UI、1日の終わりや始まりの描写、ラジコン式の移動方法など)も残っていました。
そう考えるとぼくなつを期待した結果微妙だったっていうのはユーザーだけの責任でもないのかもと思ってしまいます(どっちだよ)。
まあぼくなつを抜きにしても微妙でしたが。
ストーリーはもっとやりようがあったように思えます。
一番最後にゲームの良かった点で締めます。
グラフィックがよかった。
クレしんの面々が3Dになっていたのはよかったです。
背景にうまくなじんでいたのもすごいと思いました。
テーマソングの「まわる僕らと銀河系」もよかったです。
少し切ないような歌声も合わせて、作品の(良い部分の)雰囲気にとても合っていました。
粗さはあるものの、終盤の一部ストーリーは悪くなかったです。
描写不足だっただけで流れ自体は良かったと思います。
ぼくなつ最新作でないかな~~~~~~~~~~~~~