ZAZEN BOYS『らんど』がめちゃくちゃ良かった、のレビュー。
ZAZEN BOYSのニューアルバム『らんど』がついにリリースされました。前作すとーりーずからとんでもなく空いた事は把握していましたが、いや12年て。間ではライブこそコンスタントに打ってましたが吉田一郎からMIYAへの交代劇有り、ナンバガ再結成有りとこのまますとーりーずがキャリア最後のアルバムになるんじゃ…と(特にすとーりーずがナンバガを含めても向井秀徳史上最高クラスのアルバムだったので)バンドの行く末が若干心配になるトピックがちょこちょこありましたがとにかく無事に完成に漕ぎつけてくれて何よりですね。正直新譜はナンバガで出してZAZENはライブ活動のみ、みたいな形態になる未来を邪推したりもしてたんですけどそう安易な道へは行かず、ほっとしています。勝手に。
さて12年の重みが詰まった『らんど』はどんなアルバムとなっているんでしょうか。早速。ラーメンレビューか。
オープナー『DANBIRA』は大体ド頭は摩訶不思議な魔曲をかましてくるZAZENにしては意外な程素直なラップ&ファンクロックで幕開け。強いて言うなら「CRAZY DAYS CRAZY FEELING」が近いような。あっちよりちょっとメロウか。
『バラクーダ』もつんのめる変拍子こそ変態的ながら文脈としては全然ファンクロック。なんていうか、変態的ではあるんですけどかつてのように飛び道具で一曲を埋め尽くすようなギラつきが程よく摩耗し元来のソングライティング力の高さが素直に表出しているような印象です。
『チャイコフスキーでよろしく』はもうこれは前半の山場ですね。イントロのコク深いギターフレーズから「破裂音の朝」やナンガバで聴けたような向井秀徳のどうしようもないセンチメンタリズムが炸裂する。
豪快なメロディラインが印象的な『ブルーサンダー』と歌モノが続く流れをライブでもお馴染みの『杉並の少年』の硬質な緊張感が締め上げる。
こちらもライブで長年(5年くらい)披露されてきた『公園には誰もいない』はキャッチーなミドルロックチューンから甘くメロウなAORへと大幅にアレンジが変更されて収録される事に。元のアレンジの方が好きかな~…とは思うんですけど過去最高にキャッチーな歌モノが多い今作ではこっちのアレンジの方がキャラが立ちそうなのでこれはこれで。
突如久々すぎるMVと共に先行公開された『永遠少女』は今作でも最も鮮烈な印象を残す一曲。第二次世界大戦をモチーフに吐き出される凄惨な歌詞と共に怨念のようにトグロを巻くグルーブがちょっと尋常では無い凄味を醸しだしている。
モチーフだけ追えば反戦歌と捉えられなくも無いんですけどそこからありきたりなアジテーションに繋がらない所が非常に向井秀徳的。
ていうかこれは反戦歌なのか?世界の全部を少女を用いて説明してきた向井秀徳が音と少女を媒体に戦争を説明しようと挑む思考実験…みたいに考えてしまう(わからなくなってきた)
壮絶な「永遠少女」の狂乱の後静寂の中から訥々と始まる『YAKIIMO』は今作でも最高の流れ。「永遠少女」が昭和の暗部を描いていたとすればこちらは抗いがたい程甘い昭和のノスタルジアを描く。粛々と機械的に刻まれるマーチング風のドラムフレーズの上で得意のポエトリーディングが被さるスタイルは「Sabaku」を思い出すような。「Sabaku」+「感覚的にNG」かな。ベストトラックでしょう。
またまた静寂を打ち破る随一ハードな表題曲(?)「乱土」も開幕の不安定なギターリフからZAZEN節がさく裂する安定の良曲。ライブ映えが半端じゃなさそう。いやしかしアルバム後半の流れが過去最高にかっこいいですね。
タイトルからやらかす気配がプンプンの『胸焼けうどんの作り方』はもうなんか、お手上げです。もう降参です。もう向井の好きにすればいいだろ。曲は逆に割とオーソドックスでソリッドなZAZEN流変態ヘビィロックなのが逆に歌詞の乱痴気ぶりを際立たせる。
不条理系のSCPか??????
たぶん何がきても絶賛すると思ってたんですけど12年ぶりの新譜はしっかり名盤でした。近年のライブのモードと披露されてた先行曲の印象から大きく外れない、歌とバンドサウンドに重点を置いた真摯なアルバム、てところでしょうか。MATSURI SESSION行きたくなってきちゃったな。