【雑感その1】美容院に行きます(予告)の話
昼食を同じ席で食べている同年代の既婚男性が、こう尋ねてきた。
「美容院行ったの、旦那さん気付きます?」
美容院に行くことを告げて行く事がほとんどなので、まあ分かってはいても、切って揃える程度の、そんなに大きい変化がないことが多いから、特段感想的なものはないのが普通よね。
という私と、先輩。
どうやら、男性の同僚は、その変化に気が付かないことによって、奥さんが不機嫌になる憂き目に度々合っているご様子。
それはそれは大変だなと思う。夫婦の在り方も千差万別だなと。
本題は、その男性が、職場の女性に、週末美容院に行くんですと告げられた事により、休み明けに、「髪切った?」の声かけをするべきか否か。
という話だった。
私と先輩は、おそらくお互いにほんのり思う。
明日歯医者の予約入れてるんですよね。
週末子供の部活の送迎があるんですよね。
みたいな、なんということのない会話の一節ではなかろうかと。
今日はいいお天気ですね。の延長でしかない話題のひとつ。
そこまで意識するものか?
他に女性のいない部署で、やたらと意識しすぎているのでは?
という心のツッコミをかろうじて飲み込む。
ただし、その女性が、女が前に出るタイプの女性だという感覚も、私と先輩の中の共通認識であって、まったくの無作為でもないのでは?という勘繰りがないとも言えない。
同僚の男性が髪を切って来たことに気付いた場合などは、
「あら、さっぱりしたわね」
くらいの声かけをすることもある。
しかし、そこに色気を含んだ気持ちはない。
むしろ、床屋嫌いで、限界までボサボサを放置している人に、
「いい加減切って来たら?」
と不躾にも言ってしまうのを抑えられないことの方が、難問だと思っている。
男性の方が、短髪のために、髪を切ったのがわかりやすく、超ロングヘアの私などは、10センチ切ったところで目立たないので、気付かれなくとも、なんら気にしていないと告げたのだが、よほど奥さんで懲りているのか、声かけするべきか否か依然として悶々としていた。
のが、週明けの話。
で、金曜日。
やっと言えましたよ!
「髪切ってきたの?」って
私と先輩は、目を合わせて笑い出す。
まだ引きずってたんだ、その話題!
という心の声をかろうじて飲み込む。
今更感もあって悩んだんですけど、思い切って言ってみたんです。
「よく気付きましたね」
と言われたので、
「いや、まったく気付かないよ?ただ、行くって言ってたから」
そう返答したらしい。
いや、聞いてくださいよ!
切ったのは1.5センチだって言うんですよ!
気付く訳ないですよ!
切りに行く意味あります?
と続けた。
前髪とか、トリートメントとか、定期的に行っておくと、普段のメンテナンスが楽になるから、そこは意味がないとも言えないよとフォローしてはみたものの、涙目で笑う。
いや、もうそれ以上話題を広げるつもりはないです。(キッパリ)
心の声(それがいいと思う!)
自意識過剰と無意識のあざとさの応酬が面白かった話なのだが、我に返ってちょこっと怖くなる。
なんとも思ってない雑談に、必要以上の好意や悪意があると錯覚していないか?
Twitterなどは、特に表情が見えぬから、読み違えているのではと不安になる。
例えそれが、勘違いだとしても。
例えそれが、罪深くても。
願わくば、もう少しだけ、夢をみていたい。
恋は甘美だ。