ギターのおと
タグを見てて面白いなと思ったので、今回は私の身の回りで起こった不思議な事について書きます。
昔からよくわからないものが見えていましたし聞こえていました。でも本や夏の怪談話で見る様などろどろとしたものではなく、静かな日常の中に一瞬見えたり聞こえたりするものです。下手をしたら気づかずに終わりそうな些細な事ばかりですが、とても印象深かった事がありました。
仕事をしていたある時期、朝早くに出て昼頃には家に帰って来るというシフトの時がありました。なのでその日も早く家に帰宅し、部屋で動画を見たり音楽を聴いたりとくつろいでおりました。
隣にある部屋から突然、ギターを指で優しく弾いた音がしました。
始めは幻聴だろうと気にせずにいたのですが、その後2回程時間を置いてギターの音がして流石に私もおかしいと思いました。その時家の中には私一人。そこでふと、隣の部屋には母のギターが置いてあることに気づきました。一つは母のもの、もう一つは亡くなった母の弟さんから譲り受けたもの。きっと風が入り込んで偶然ギターが鳴ったのだ。そうに違いない。
そんな事を思いながら恐る恐る隣の部屋に入り込んだ私がみたのは、ホコリ避けにとビニール袋で厳重に梱包されたギター達でした。
こうなると、沈黙が逆に恐ろしい。ばくばくとうるさい心臓音を押さえながら部屋に飛び込み、動画の音を高くして震えてたのを覚えています。
幸いにもその後ギターの音はせず、母が帰宅。事の顛末を話した後部屋に戻ろうとした私の耳に「あっ!」と母の大きな声が届きました。
「どうしたの?」「今日、弟の命日だ」
母の弟さんはとっても歌とギターの上手い方でした。実家にお盆や新年会で集まると、ギターを一本持って来て即興で弾いて皆で歌を歌う。その中心にいた方です。季節は秋。農家の仕事や写真の展示会と忙しくして命日を忘れていた母に知らせに来てくれたのでしょうか。
ギターの音が聞こえたのはあの一度だけ。
とても不思議で、でもなんだか胸が温かくなる出来事でした。