(52)ポインセチア
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このシリーズは散歩中に見た300種くらいの植物を紹介していくシリーズです。
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ポインセチア
原産国はメキシコと中央アメリカ。
ポインセチアは、日本では小さな鉢植えの植物の印象があると思うが
中米地域に自生しているものは、
一階建ての家の屋根よりも高い木になる。
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ポインセチアという名は通称であり、学術上の標準和名はショウジョウボクだ。
日本では11月~12月ごろ
クリスマスが近くなると花屋に鉢物が出回ることから「クリスマスフラワー」とも呼ばれ、冬の季語とされていたりもする。
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メキシコには
ポインセチアに関するこんな伝説も存在する。
ある所に、貧しい少女がいて
教会にブーケを捧げようとしたが、花を買うお金が無かった。
少女はしかたなく雑草でブーケを作った。
だがそれは粗末で見栄えの悪いもので、教会に行くことをためらうくらいだった。
そんな少女を、彼女のいとこは
「神様への愛があれば、どんな捧げものでも受け取ってくださる」と励ました。
その言葉に少女は決心をして
教会に入ったところ、雑草のブーケが真っ赤な花束、ポインセチアになった。
それからメキシコでは「ノーチェ・ブエナ」と呼ぶようになったそうだ。
「ノーチェ・ブエナ」は「素晴らしい夜」という意味だが、「クリスマス・イヴ」という意味もある。
このような伝説を
アメリカ合衆国の初代メキシコ公使であったジョエル・ロバーツ・ポインセットが知ったことにより、この植物と、真冬に咲くこの植物の伝説が、アメリカに伝えられ、この植物に彼の名前がつけられた。
日本には明治時代に持ち込まれた。
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ポインセチアは日照時間が短い日が、一定期間ないと、赤くならないという性質がある。
正確には、秋ごろ1~2か月、1日あたり12時間以上の夜の時間をもって初めて、葉が赤くなるスイッチが入る。
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話は変わるが、1920年、ガーナ―とアラードという研究者が、ダイズの種を少しずつ日にちをずらして撒くという実験を行った。
そうすると、どの個体も、ほぼ同じ時期に花が咲いた。
(※)彼らは研究を進め、ダイズの花芽ができるスイッチが、土の栄養状態や、空気中の二酸化炭素の濃度ではなく、日照時間だということを発見した。
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なぜ気温ではなく、日照時間をスイッチにする場合があるのか。
これは
成長サイクルにおいて、気温がスイッチになってしまうと
その年ごとの変化が激しく、不安定になってしまう場合も多くなるため、日照時間をスイッチとして進化したのではないかと考えられている。
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ポインセチアも、日本で育てると、本来の生息地とは日照時間のサイクルが違うため、そのままだと赤くならない。
赤くするには、彼らにとっての夜の時間を長く作ってやらなければならず、日本の生産者は、季節と日数を計算し、段ボールなどで、光を遮る時間を作り赤くなるように工夫している。
あのような美しいポインセチアがクリスマスの時期に店頭に並ぶまでにはこうした研究と生産者の工夫があってのことなのだ。
Special Thanks ナレーション台本化協力 人外薙魔様
※このことを専門用語で光周性(こうしゅうせい)と呼ぶ。
筆者も、赤いサルビアを、夜も照明で毎日照らしてしまったため、花が咲かなかったという話を聞いたことがある。
参考文献
https://hakusan1.co.jp/magazine/history_of-poinsettia/
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