【猫と人に優しい保護猫活動】野良猫保護の実践、職場体験レポート
こんにちは、たっちゃんです。
保護猫活動とは具体的にどんなもの?
猫が好きな人も保護猫を家族に迎えた人も
「そういえば保護猫活動ってなんだろう」
もしかしたらこう思うことがあるのではないでしょうか。
家族に迎えた保護猫の生きてきた背景や、猫と人の幸せのための活動を知ってもらえたらいいな、という目的と知識と技術のアウトプットも兼ねて、書いていきたいと思います。
今回は以前、横浜市栄区で『猫に優しいTNR講座』の講師を務めていた小池さんが代表を務める『株式会社猫から目線』さんで野良猫の保護に関する実践講座を含む職場体験を受け入れていただきました!
前回の講座の内容↑
受け入れてくださった猫から目線さん↑
最初に断っておきますと、今回は保護活動と研修に夢中で写真少なめです。ご了承ください。
1.職場体験の概要(背景・流れ)
猫から目線さんの職場体験は今回が初の募集です。
大阪を拠点に始まった猫から目線さんの活動は現在福岡、沖縄と西日本での活動を中心としています。今後は現在の府県以外にも活動を広げていく予定だそうで、そこでのサポートをしてくれる人にまずは猫から目線をより具体的に知ってもらうことが目的とのことです。
講座や勉強会はあっても、実はTNRなどの実践の機会はどこの団体も意外と少ないのが現状です。私もかねてから保護活動の研修機会がないかと伺っていたので、猫への理解を深めるとともに、実際の現場を肌で感じたいと思い、即応募。
速攻夜行バスを取り、朝から晩まで1日みっちり同行させてもらいました。
スケジュールはこんな感じです。
普段私は保護された後、里親さんに行くまでの猫さんのお世話を行っていますが、実は捕獲機を使ったTNRは今回が初。初めてのことだらけで学びが沢山!
私は地域猫・野良猫の保護猫活動はTNR、そのイメージが大きかったのですが、実に多岐にわたる依頼、助け方があることも知ったのです。
2.野良猫保護の基本の流れと今回の依頼
野良猫保護の基本の流れは次のようなものです。
ここで前回の講座の内容をおさらい!
【ヒアリング】
依頼主さんがどうしてほしいのか、ごはんの時間や体調など、普段の猫さんの様子、猫さんとの関わり方を丁寧にヒアリングしていきます。
【事前準備】
レジャーシートや捕獲機、布、チュールなどのごはん、ゴミ袋、ペットシーツなどヒアリングをもとに必要なものを準備しておきます。
通院の必要があれば、病院の予約も忘れずにします。
【捕獲】
捕獲機は猫にとってどうしたって怖いもの。確実に捕獲できるタイミングで確実に捕獲して何度も猫さんに怖い思いをさせないようにします。けがは絶対にNG。
これらを踏まえて早速今回の研修内容です!
3.【CASE.1】風邪ひき猫さんの捕獲と代理受診
依頼の中で大切なポイントは大きく2点
①餌づけ(時間・場所・人)
②捕獲機経験の有無
餌をあげる時間と場所が分かると、捕獲の時間にと場所もそれに合わせて決まる為計画が立てやすくなります。人になついていればごはんも食べてもらいやすいです。
捕獲機経験は過去、特に大人になった後だと、一度経験した捕獲機は数年は確実に覚えているので、知らずに同じ捕獲機を使うと捕獲が難しくなります。これがわかると、どの捕獲機を使えばいいのかなど方針が決めやすくなります。
朝7時、バス乗り場からそのまま直行したこちらの現場。
現場につくと、ごはん場所の前で既に猫さんが
「ごはんまだ?」と待機していました。
まずは依頼主さんにご挨拶。
続いて再度、猫さんの体調の様子、食欲、周囲に3匹他の猫さんもいたのでその子たちとの関係性、人なれ具合、捕獲機経験の有無を確認します。
その後、捕獲後の流れ、今回は代理受診だったので受診する病院と代理受診の流れをテキパキと説明していきます。
過去一度、トマホーク社の捕獲機を経験済みということで今回は別のドロップ式捕獲機を使用しました。
ドロップ式とは簡単にいうと、舌切り雀でおばあさんが雀をつかめるときに使ったアレです。
捕獲機は大人になってから経験した場合、最低数年はその記憶が残る為、同じ捕獲機は使えません。
捕獲の準備で忘れてはいけないのは、捕獲前まではご飯をあげないこと。
満腹であればもちろん捕獲に使うご飯は食べてくれません笑
『捕獲』
というと「かわいそう」と思う方ももしかしたら知るかもしれません。
私もそうです。
けれど完全な野良でなく、既に一度人が介入し、手術を受け、人からご飯をもらい人と共に暮らしている猫が健康に安全に暮らせるようにしていくのも人の責任です。だからこそ捕獲は猫に優しい必要があるのです。
地域で人の生活エリアで暮らしている時点で既に野生ではないのです。
ドロップ式の捕獲機を設置後、猫さんが捕獲される位置でごはんを食べてくれるまで、車の陰で待機します。
ここで捕獲するまでのポイントをおさらい!
『押さない・鈴餌を足さない・うろうろしない・無理しない』
つまり
猫さんが安心してご飯を食べるまで、ひたすらに待つ、確実に捕獲できない時は、捕獲せず仕切りなおす
ということです。
途中で人間がガサゴソすると、猫さん的には
「ん?なんか騒がしいぞ。ここは今安全に食事ができない。しばらくここでご飯を食べるのをやめようかな…」
となるわけです。
反対に仕切り直しだと
「おなかいっぱいおいしいご飯を食べた。さあ日向ぼっこだ」
と猫さんは気持ちよく帰れるわけですね。
なので仕切り直しでも猫さんは次もご飯を食べに来てくれるので捕獲可能という寸法です。
こんな風に猫のキモチを常に考えることが肝要なのだと思います。
複数猫さんがいる場合は、ターゲットの猫が食べるように、先に他の猫さんを満腹にさせる、遠ざける、などあります。
こちらの現場ではドロップトラップの組み立てや、捕獲時、猫さんの様子を観察するアルフレッドカメラについて、病院の同意書の説明、会話の仕方などを学びました。
アルフレッドカメラはおうちのペット見守りカメラとしても活用できるようです。
無事捕獲しその日のうちに動物病院へ移送しました。
大阪では野良猫専門病院もあるようで、そういったのがあることも初めて知りました。東京にもどういったところがあるか早速調べてみようと思います。
大阪事務所を見学後、京都へ2件目の現場へ向かいました!
途中のお昼ご飯のおにぎり
4.【CASE.2】外飼い猫さん4匹の捕獲とおうちへの移送、ケア
2件目の依頼内容はこちら。
普段からご飯をあげていた外猫を飼うために捕まえてほしいというもの。
「こんな依頼もあるんだなあ」
と率直に思いました。
今回は4匹、かつ外飼いを室内飼育に、ということで1件目とは違う注意点もありました。
まず『4匹』
一匹が捕獲機の周りをうろうろしているときに目の前で他の子を捕まえるとうろついていた子に警戒心を思いっきり植え付けてしまうので、可能なら個別で一匹ずつ捕獲するのが望ましいです。
かつ、猫さんどうしが仲良かったり悪かったりすれば捕まえる順番も大切。
捕獲後、仲いい子どうしで、できればいさせてあげたいところ。
次にターゲットの猫を確実に把握すること
ターゲット外の子は同じエリアで別の餌やりさんのところで暮らしている子かもしれません。今回はプチトラブル見たいのもありました。
これらを踏まえていざスタートした2件目。
こちらの現場では捕獲機の設置や捕獲後に猫さんが暮らすケージの組み立て、捕獲した猫さんがけがをさせないように爪切りなどを実際に体験させていただきました。
チュールを切れ目なく直線に引くのが難しい…。
5.プチハプニング
2件目の現場ではプチハプニングもありました。
ターゲットの子が来るのを建物の角で待っていると、すぐ近くからヒアリングとは別の子が顔を覗かせてきました!
しかもよく見るとその地域には塀の上や別のお宅の前にも猫さんが沢山!
ターゲットの猫は本当に4匹なのか、模様も似ていますからターゲットの子と似た子を間違えて捕まえてしまうかもしれないリスクが高まってきました。
依頼主さんに写真を見せていただいたり、映像を見てもらったりして、どの子がターゲットなのか再確認しました!
些細なことでもトラブルにつながりかねないので、ヒアリング、確認、凡事徹底です!
6.件目の現場で学んだ事
今回の研修で学んだ最大のことは
実際の『猫さんの導線を考えること』と、『環境への配慮』です。
導線とは、ねこさんの気持ちを考え、どう移動するのかを考えること。
正に猫から目線。
紙や講義のスライドで見るのと、実際の土地、環境で捕獲機を配置して、猫さん気持ちと動きを考えるのはやはり全く違うものでした。
その場所ならではの要因も絡んできます。
今回で言えば、お宅の中での捕獲だったので
猫さんの出入り口はどこで、捕獲機を仕掛ける床の材質、猫さんの目線で部屋に入って来たときいつ捕獲機が目に入るかな?
などです。
環境への配慮、これはお宅の環境を荒らさないこと、住民依頼者さんが嫌な気持ちにならないこと、周辺住民の迷惑にならないことです。
今回も近隣住民の方と顔を合わせる瞬間がありましたが、笑顔で、丁寧に、簡潔に事情を説明すること、この重要さを目の当たりにしました。
不審に思われれば警察に通報されかねません。
なにせ猫さんが捕獲されるまで、ジッと側でカメラの映像を見ながら座っているのですから。今回は連続3時間くらいはコンクリートに座って猫さんの様子をうかがっていたと思います。
私の人生の中で一番長くコンクリートに座っていました笑
知らない人が自分の家の前でうろうろしていたり、ずっと居座れば誰だって怖いはずです。
なので猫さんだけでなく、人にも優しくある、普段の生活でも基本ですが、改めて実感しました。
この時、以前読んだレイチェルカーソンさんの著書『センスオブワンダー』で出てきた言葉
「知ることは感じることの半分も重要ではない」
という言葉を思い出していました。
自然と生き物の美しさを綴った100ページほどの短いエッセイなのでご興味あれば読んでみてください。
おすすめです。
全くの知識なしで挑むのは無謀ですが、知識を得たうえで体験に勝る学びはないのだと思います。
2件の現場では捕獲後、飼い主さんんがけがをしないよう爪切りも実施。
普段もお世話の中で爪切りは行っていますが、捕獲直後の気が立っている子の爪切りは全くの別物。
下手をすれば噛まれたり引っかかれたり大けがになる可能性を多分に秘めています。けがをしにくい位置取り、爪切りの様子を見た時、依頼主さんが不審に思わない位置取りなどを学びました。
というのも自分は猫さんを落ち着かせながら爪を切ることに必死でした。
態勢は猫さんに覆いかぶさるようになっていました。
「他の人が見たら不安におもう」
というアドバイスを受けて
「あ、言われてみればばそうだな」
とハッとさせられたのです。
ねこさんと自分と、第三者目線と配慮は尽きません!
7.猫さんのストーリーと保護猫活動
保護猫さんやお外で暮らしている猫さん、猫さんそれぞれにストーリーがあります。
猫を迎え入れた時、保護主さんや保護猫カフェのオーナーさんなどからもしかしたらその背景を聞いている方もいるかもしれません。
今回私はその保護の瞬間や、猫さんの生活の一部を実際に五感で感じました。
・朝、他の猫さんと共に餌やりさんのもとへご飯をもらにいき、体調を機にかけてもらいながら自由に生活をする子
・少し人は怖いけど人の生活の裏でひっそり暮らしながらも上手に共生している子
・塀の上で多分いい夢見てそうにくつろいでいる子
それぞれの生き様がそこにはありました。
そして現場で動く人は、そんな猫さんのサポートや、人と野良猫さん、地域猫さんがもっと上手に幸せに共生できるように、猫さんにも人にも環境にも配慮しながら動いているのを実感した1日でした。
猫を好きな人、猫と暮らす人、動物に興味がある人が
「へえ、保護猫活動ってこういうのもあるんだ」
と、研修最初の私のように知ってもらえたらいいなと思います。
ではまた!