猫のたかは考えた『ご飯を横取りすること』について
今日は、まめ子の夫が面白いことをしていた。まめ子の夫はいつも夕方の4時ぐらいに僕のご飯を準備し始める。僕の器はガラス製なので、まめ子の夫がスプーンで僕のご飯をかき混ぜると、いつもカンカン音がする。このタイミングで、僕は食事の準備が始まったことにすぐ気がつく。まめ子の夫はいつも同じ場所で、僕の食事をつくる。つくると言っても、ドライフードとウェットフードを混ぜているだけだ。でも僕はそのご飯がとても好きだ。
僕はウェットフードがすごく好きだから、本当は混ぜられたくない。もしドライフードの上に、海鮮丼みたいに、ウェットフォードだけをボンと置いてくれたら、僕はウェットフードだけを食べてお腹いっぱいになってしまう。
このことを、まめ子の夫はよく分かっているから、必死になっていつもスプーンで混ぜている。混ぜ終わると、僕の化粧室の前の、食事台の上に、ご飯を置いてくれる。
でも今日は面白いことがあった。まめ子の夫が混ぜ終わった後、なんとまめ子の夫は僕のご飯を持って行って、自分のダイニングテーブルの足元に置いた。そしてまめ子の夫はしゃがんで、まるで僕がそのご飯を食べるかのように顔を近づけて、唇を僕のご飯に近づけた。
僕は最初、一体何をしてるんだろう?と思った。僕は自分のご飯が置かれる予定の場所で、まめ子の夫の様子をじっと見ていた。まめ子の夫はずっとやり続けている。一体何がしたいんだろうか?どうして食べ始めないんだろうか?
ウェットフードとドライフードを食べたいのであれば、もっと顔を、食べ物までちゃんと近づけて、ちゃんと口を開けて、食べることをしないと食べられない。なんでギリギリでとめているんだろうか?どうして唇と食べ物の間の距離を少しとって、それで僕の顔をチラチラ見ているのか、全く理解できなかった。
しばらく経ったらまめ子の夫は、僕のご飯を持ち上げて、いつもの僕の場所に置いてくれた。いつもの場所に置かれたので、僕はそのご飯を食べ始めた。
食べ終えると、まめ子の夫が、まめ子にインスタグラムの動画を見せていた。僕もその動画を覗き込んだ。そこには2匹の猫がいた。1匹の猫が、もう1匹の猫の顔を右手で、押さえつけながら、ご飯を食べているという動画だった。つまり、1匹の猫が、自分のご飯を横取りされないように、もう1匹の猫を押さえつけていたという主旨だ。まめ子もまめ子の夫も笑っていた。
僕はその動画を全く面白いと思わなかった。なんで押さえつけているのか、あまりよく理解できなかった。食べている猫はすごく食べにくそうに見えたし、押さえつけられている猫は、顔が痛そうだった。けれど、まめ子とまめ子の夫が笑っているのは、嬉しかった。
そして、この動画を通して、理解できたことが一つだけある。それは、まめ子の夫はどうも、僕のご飯を食べ始めようとした時に、僕が慌ててやってきて、まめ子の夫の隣で食べ始めることを期待していたらしい。
ごめん。僕はそんなこと全く頭にも浮かばなかった。だって、僕はてっきりまめ子の夫が、僕のご飯を食べたいのかと思ったから。
僕はまめ子の夫に、僕のご飯と思われるものを全部食べられても、全く気にはならない。なぜならその器が空っぽになったら、まめ子の夫がもう1つ新しいご飯をつくってくれるのを知っているから。
僕はそのことを一度も疑ったことはないし、疑うことなんてできない。だから、僕は誰かに自分のご飯が全部食べられたとしても、全く不安にもならない。なぜなら、僕は常に与えられることを知っているから。
もし、猫3匹がいきなり僕のところにやってきて、僕のご飯を横取りしても、僕は全く気にならない。僕は、まめ子とまめ子の夫に全信頼をおいている。僕は常に必ず与えられるし、僕は決して見捨てられないことを知っている。
でも、ごめん。一緒に食べようとしなくて。
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