どうぶつの先生
この物語は、私の理想とする夢の学校社会であり、フィクションです。
「むぎ、早く起きなさいよ!」
母が一階から大声でわたしを呼んでいる。
今日は月曜日。
また一週間が始まる。
実は最近、国の教育方針が変わって、教師資格をもつ人々は中校生以上を対象に担当するようになり、小学生以下はどうぶつの先生に教えてもらうこととなった。
❝にんげんでは同じ事を同じように教えるだけなので、同じようなこどもばかりが育ってしまい、面白味に欠ける。これからの時代を生き抜くこどもの教育を革新する。❞という理由らしい。
わたしは難しいことはよくわからないが、
どうぶつの先生はとても面白くて大変なのだ。
母から何度も呼ばれたので、渋々起きて顔を洗い学校へ向かった。
【一時間目:感情】 担当:いぬ先生
なぜ感情という教科をいぬ先生が担当しているのか?
それはいぬ先生は人の気持ちを理解し、喜怒哀楽を表情することが得意だからだ。
いぬ先生は言った。
「相手の顔をよく見てごらん。」
顔には色んな表情が出る。いぬ先生は嬉しいと口元としっぽに出てしまうらしい。
相手の気持ちのわかる人は、素晴らしい。いぬ先生の口癖。
いぬ先生からは人を大切にすることを教わっている。
文章一つでもその人の目線で読むのと、自分の目線で読むのでは解釈が違うのだ。
最近ではSNSでの行き違いが多いようだけど、いぬ先生から教わったことを思えば行き違いもなくなるんじゃないのかなぁ。
【二時間目:知恵】 担当:さる先生
さる先生はとても賢い。にんげんに似ている。
どうやったら自分たち家族が仲良く食べ物に困らず生きていくのか?など生活の知恵を教えてくれる。
よくニュースで、さるの集団が民家を襲って畑の作物を食べてしまうと報道されているが、あれは偵察舞台が初めに町中をうろうろしながら作物のある家を探し当て、その後に仲間に情報を伝えているのだそうだ。
そして仲間皆で食べ物をもらう。
「にんげんは皆に幸せを分け与えていない気がするんだ。自分のことで精一杯だから。」
と、さる先生は言う。
民家を襲うのもにんげんが森を切り崩しているせいなのだろうと思うと心が痛い。
【三時間目:強さ】 担当:ねこ先生
ねこという種族は群れない。孤独を好むねこ先生は、これからの人間社会で生きていける強さを教えてくれる。
「にんげんは周りの子と同じじゃないと不安になるみたいだけど、自分さえしっかり持っていれば不安にはならないよ。」
ねこ先生は、私達にんげんが周りに合わせる習慣を不思議に思うらしい。
自分らしさを大切にすることの方が大事だという。
あの子と一緒じゃなきゃだめ、なんて考えは早く捨てて、私じゃないとだめなことを見つけなさいとねこ先生から教わった。
算数や国語ではわからない、生きていくためのスキルはどうぶつ達の方が本能でわかっているのだ。
頭で考えてしまうにんげんには、中々難しいことが多い。
だから私は毎日学校へ行き、大人になるために準備をしている。
どうぶつの先生たちに感情、知恵、強さを教えてもらって、立派な大人になって、強く生き抜いていきたい。
そう思って毎日学校に向かっている。
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