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『日天』イチ推し

1ヶ月ほど前から、TBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』にハマってます。毎週日曜10時から始まる、約2時間の生放送。主に東京、関東地方で放送されており、かれこれ20年続いているご長寿番組です。

私は長らく岡山に住んでいるため、このラジオの存在はまったく知りませんでした。今年の夏頃に東京在住の漫画編集者さんから、
「シュールな笑いが好きならきっと猫野さんも気に入りますよ」
と教えてもらい、それならばと最初はPodcastで20分ほどのショートバージョンを聞いていました。

東京の天気や交通情報などから始まる穏やかな番組に、岡山には関係ねえなあと内心つまらぬ思いで耳を傾けつつ漫画を描いていたのですが、その日のテーマに沿ったリスナーからのお便りが紹介されるあたりから、安住アナのテンションがぐっと上がるのです。

『恥ずかしい思い出』、『大事にしているもの』など、ラジオ番組でよくある身近なテーマに寄せられるお便りを読んだあと、安住アナも自らの体験を語るわけですが、この体験談が大抵尋常じゃない。

子どもの頃自転車で憧れのタクシー運転手になりきり、だだっ広い河原で客を拾うふりをして「運転手さん、タイヤ置き場まで急いでくれ!」「承知いたしました!」と一人二役、猛スピードでペダルを漕いでいた話。

成人式でうまく振る舞えなかった自分を鼓舞するため、別会場の式に二度めの出席、祝いの品にもらった小さなサボテンを大事に育て、実家に託して何年かのちに「そういえばこないだ花が咲いたよ」と母親から電話で知らされ、「なぜ咲いたそのときに知らせてくれなかったのか!」と憤った話。

いくらでも出てきます。20年も続く番組で、いまなお天井を打つ気配なし。

たった20分やそこらのショートバージョンでは物足りない。2時間全編聞いてみたい! と欲が出て調べたところ、公式YouTubeチャンネルを発見しました。しめしめ。ほくほく顔で聞き始め、すぐにヘビーリスナーになってしまいました。

このチャンネルには、過去20年に及ぶ放送の中からより抜いた『傑作選』が入ってます。全編聞くのは時間的にちょっと…という場合、傑作選を適当につまんで聞くだけでも十分に楽しめます。

なにしろ私は新参者で、すべての配信を網羅できていないため、「これぞ日天にちてんTOP5!」(日天は『日曜天国』の略)などと胸を張る資格はないのですが、これまで聞いた中からみなさんの何らかの活力になるかもしれない動画を下記に3本紹介します。


安住アナは、たとえばお坊さんの読経など、独特の発声やリズムを真似るのがとても上手です。この動画では祈祷する神主の祝詞のモノマネが披露されています。

『具体的な祝詞』

2010年、安住アナが友人と連れ立って神社に行き、縁結び系の祝詞をあげてもらったときのエピソード。当時女性運が悪かったらしい安住さんが、なんとかして良縁を授かりたいと、祈祷の始まる前に書いた具体的な要望記述を、参拝者が何人もいる前で神主さんにそのまま読まれてしまったそうです。

このときの祝詞の声真似が大変秀逸。あまりの精度の高さに、自室にいながら神社に詣でているようなありがたい気分になりました。


『口が硬い男』

ここで言う『口が硬い男』とは一人のリスナーのことを指します。日天ではよくプレゼント企画をやっているのですが、このときは安住アナにある事情があり、「自分から譲り受けたことを決して口外しないでほしい。その約束が守れる方にだけ内密に差し上げます」と応募者を募集。多数の希望者の中から安住さんが「これぞ!」と選んだリスナーに電話をかけ、その相手が本当に口が硬いかどうかを見極めるという、なかなかスリリングな内容です。

寄せられるお便りをいくつも聞いているとわかってくるのですが、年季の入った日天リスナーには相当の手だれが多く、言葉は悪いですがクソ真面目な遊び心を持ち合わせた人が多数いらっしゃいます。そういったハイレベルなリスナーと安住さんとの、手に汗握る攻防が楽しめる一編です。


最後に紹介するのは、つい先週の日曜日に放送された回です。つまりまだアーカイブにするには新しすぎて『傑作選』には入っていない。けれどもいつか入るのは間違いないと断言できる貴重な話題が取り上げられていたので、通常の全編バージョンをここに貼ります。

最初から聞いていただいてももちろんいいし、むしろそれをお勧めするのですが、時間のない方のために関係箇所を抜粋すると、

2:00〜10:00あたりです。

あるリスナーが「私の勘違い」のテーマに寄せたお便りが発端になっています。その人は、甲子園で行われる高校野球の試合開始時に鳴る「ウウ〜」というサイレン音を、場内アナウンスを担当するウグイス嬢が自ら発している声だと長年思い込んでいたというのです。

そこで、「こんな感じでしょうか」と安住アナがその声真似を雰囲気だけでやってくれます。前の週にも披露してくれたんですがそのあと練習したらしく、その甲斐あってこの週はより再現度が上がっています。

さらに自分で演じたあとに、我こそはと思うリスナーからの録音した声を募集。

1:22:00〜

2人のリスナーの「人声サイレン音」が聞けます。最初の1人は「酒焼けの声」で、もう1人は「妊娠10ヶ月で肺に息を溜めるのが難しいプロの声楽家」です。おそらく山のように送られてきた音声データから、この2人を選ぶスタッフも相当の曲者とお見受けします。


以上、いずれも癖の強い3本を紹介しました。

安住氏は、日天が東京マラソンやオリンピック中継など大きなイベントに重なる日に、あえてラジオで番組を聞いてくれる人のことを「真のリスナー」と呼びます。その次に、生放送で聞く人を「正規リスナー」と言い、YouTubeなどの配信であとから聞く人は非正規扱いです。

しかし地方や海外で日天を楽しむ人の多くは「私は非正規リスナーです!」とYouTubeにコメントして喜んでいる様子。私もコメントこそしませんが、気持ちは彼らと同じです。

テレビを見ないせいか、動いている安住アナには興味なし。自分の古巣でやりたい放題やっている彼の声だけを聞いて漫画を描き、時々震えながらペンを取り落とす毎日です。扱いに困るような話題を生放送で次々と繰り出す安住氏を相手に、20年間アシスタントを務めている中澤アナの絶妙な合いの手や笑い声も最高のお供です。

寿命を全うして海底に沈むクジラが深海魚にとっては数十年に一度のご馳走になることを突き止めた研究者や、江戸時代お籠に乗った大名がどのように用を足していたかを熱心に語る歴史学者など、かなり個性的なゲストが毎週登場するのもお楽しみ。

サブカル好きにおすすめの日天が、これからも末永く続きますように。


最後になりましたが、企画の参加条件をまったく満たしていないけれども、せっかくお声がけいただいたので、チェーンナーさんの『YouTube履歴をさらし合おう2024』にお祭り気分で参加します。

本来なら多種多様の動画を紹介すべきところでしょうが、いまの私は日天の摂取ですべてまかなっておりますため、大変偏ったチョイスになったことをお詫び申し上げます。

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最後まで読んでくださってありがとうございます。あなたにいいことありますように。