見出し画像

【小説】連綿と続け No.68

侑芽は航から返された指輪を握りしめたまま
悲しそうに笑って見せた。

侑芽)こんな風になるなら、出会わなければ良かったですね


航は抱きしめることも出来ず、
立ち上がって玄関に向かった。
そして背を向けたまま

航)勝手やと思われるんはわかっとる。けど俺は……これからもずっと、侑芽が好きや

そう言って出て行った。

部屋に残された侑芽は1人きりで咽び泣いた。

眠りもせず荷造りを終わらせて、
翌日、引っ越し業者に荷物を引き渡した。

自分は富樫の車で五箇山まで行くから、
僅かな荷物を持って部屋を出る。

アパートの前で立ち止まり、
そこから続く真っ直ぐな農道をぼんやり見つめた。

何度ここから航の車を見送ったのだろう。

見えなくなる手前で
いつもハザードランプが点滅していたあの景色を
もう見ることは無い。

侑芽)さよなら

ここから先は

952字
大長編なのですが書籍化するまでは値上げせずこちらで公開していきます。

富山県を舞台にした物語。 51話から先はマガジンをご購入いただいた方のみご覧いただけます(¥200)

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?