ねこの好きなところ10選〜身体編〜
①眼
野良猫だった頃を忘れていないような、孤高を感じさせる眼光の鋭さが好き。
横から見たとき、不安になるほど透明で丸い眼球。黄色くてほんのちょっと緑がかっていて、暗がりから獲物を見つめるときは玉虫色に光る目。
膝に乗り、こっちを見つめてくる目の真っ直ぐさが眩しい。
②鼻
淡いレンガ色をした鼻。
メンソレータムのリップを塗っていると、匂いが気になるのか、近くまで鼻を近付けてきて、すんすんと嗅ぐ。そのまま鼻に鼻を押し当てると、冷たく濡れた感触がする。
外出して帰ってきたあと、纏わりつくようにして嗅ぎ回るときに、肌をくすぐる鼻息が愛おしい。
③口
ω と表現されるのがぴったりのかわいさ。
寝ているときに微かに開いた口元から、犬歯がちらりと覗いている瞬間に幸福を感じる。
歯みがきが大嫌いで、いつまで経っても大暴れするのも、時折強すぎる甘噛みをするのもご愛嬌。
舌の鮮やかなピンク色が、キジトラの濃い毛色を繕っているときのコントラストが美しい。
④耳
薄っぺたで、白に桜色を一滴だけ落としたような色をしているのは血管が透けているのだろうか。
私には聞こえない音を感じ取り、ぴるぴると動き、時にはとんがっている耳。自分の名前をちゃんと分かっていて、呼ぶと振り返る。
桃のように細かい毛が生えていて、たまに衝動に駆られて唇に挟むと、ひんやりと冷たい。
⑤頭
ちょうど手のひらに収まるサイズのちいさな頭。
初めて出会ったときから、数年経った今も、手を前に出すと頭をごつんとぶつけ、擦り付けてくる。何度同じことをされても、今までもこれからも毎回ずっとうれしい。
両手で包み込むと、いのちがここにある、というのを強く感じる。
⑥手足
とてとて、という擬音が似合う風情で駆けてくる姿。コンパクトに香箱に折りたたまれた様子。狩りモードで猛ダッシュする残像。
同じ手足から繰り出されるいろんな動きのすべてそれぞれに異なる良さがある。
肉球もさることながら、足のクッションの効いたふわふわ感が何とも言えない心地よさ。
⑦尻尾
幸福を引っ掛けてくるらしい、かぎしっぽ。
歩いているとき、ぴんとした固さをもって、ふよんふよんと左右に揺れているのが良い。丸まって寝ているときに、ぺしんぺしんと床を叩いているのも良い。
自分の尻尾が当たって音がしたのに、物音にびっくりして振り返っている姿もまた良し。
⑧匂い
猫は他の獣のように匂いはしないのだと聞いてはいたが、ほんとうに獣臭は一切しない。その代わり、身体の部位によって異なるいい匂いがする。額から頬にかけては、素朴なお菓子のような甘い香り。ふかふかな背中は、無臭か干したての布団みたいな匂い。見た目も色も小豆みたいな肉球は、独特の香ばしさがある。
⑨声
比較対象はないけれど、頻度からいってよく喋る方だと思う。もちろん何を言っているか正確には分からないけど、鳴き方のパターンが多くて感情豊かに聞こえる声。
子猫のように甲高いピィーという声を出すときは、撫でると大抵鳴きやむ。甘えてくれているのだろうかと思うと、生きていける気がする。
⑩毛
ブラッシングすると、換毛期には心配になるほどブラシにもりもりになる。量のせいか、身体の色が、夏はすこし薄く、冬はすこし濃い。
丁寧に毛繕いされているから、いつでもふわふわで、いつまでも撫で回したくなる。
ひげは、抜け落ちたのを見付けたら、なんとなく捨てられなくて、全部箱に入れて保管している。