会社法比較論点
設立
○発起設立と募集設立
・発起設立では発行可能株式総数を定款で定めていないときは、会社の成立の時までに、発起人全員の同意による定款変更
・募集設立では払込期日又は払込期間の初日のうち最も早い日以後は創立総会の決議によってこれを定めなければならず、発起人全員の同意ではできない
・募集設立では払込取扱銀行はその証明した払込金額を、会社の成立の時まで保管してこれを会社に引き渡すべきものであり、会社の成立前に発起人又は取締役に払込金を返還しても、その後成立した会社に対し、払込金の返還を対抗できない(最判昭37.3.2)
・発起設立では当該義務はない
○設立無効と会社不成立の発起人の責任の違い
・会社の設立無効判決が確定すると、当該会社は清算手続を開始する
よって発起人が設立時募集株式の引受人に対し、直接払込金を返還する責任を負うわけではない。
・会社不成立の場合は、発起人が株式払込金の返還義務を負う
株式 新株予約権
○株式数要件なし公開会社6ヶ月要件のみ
・責任追求訴え請求権
・取締役違法行為差止請求権
○保有要件の必要ない株主の権利(公開会社)
設立無効訴権(1株権
※比較で株主代表訴訟は1株権だが6ヶ月要件
累積投票請求(1株権
募集株式発行差しどめ(1株権
※比較で取締役違法行為差しどめは1株権だが6ヶ月要件あり
会計帳簿閲覧権(議、数3%
検査役選任請求(議、数3%
*比較で総会検査役選任請求は6ヶ月要件あり議1%
取締役責任軽減の異議(議3%
解散請求(議、数10%
○無償割り当て
・新株予約権無償割り当てで新発行と自己新株予約権を混ぜれない(別個のものだから)
・株式無償割り当ては混合できる
○相続人からの譲渡制限自己株式取得
(双方とも特別決議)
・合意による取得
非公開会社 合意 定款定め不要 相続人が議決権を行使するまで
価格決定の申し立てなし
・会社からの売渡請求
公開会社でも良い 会社からの一方的請求 定款の定め必要 「会社」が相続等を知った時から1年(議決権を行使していても可能)
価格決定の申し立てあり
○譲渡制限株式の割当と譲渡承認の決議期間
(取締役会非設置会社)
・割当は株主総会特別決議
・譲渡承認は普通決議
○株式譲渡制限の承認
譲渡担保 競売 清算中の会社はいる
質入れ 包括遺贈 名義書換えはいらない
○株式発行無効の訴え
公開会社は6ヶ月まで
非公開会社は1年まで
(非公開会社は定時総会ではじめて知るということも少なくないため)
○通知公告
株式併合は「効力発生」2週間前までに「通知または公告」
(特別決議をしているので公告でも良い)
(株券発行している場合は1ヶ月前までに株券提供通知かつ公告)
株式分割は「基準日」の2週間前までに「公告」
無償割当は効力発生「後」遅滞なく「通知」
新株予約権
○新株予約権の期日の違い
・新株予約権発行の払い込みの期日を定めることを要しない
・新株予約権の割り当て日は必ず定める
○新株予約権買取請求
・譲渡制限新株予約権の譲渡不承認の買取請求ない
・新株予約権対象株を譲渡制限にする場合買取請求あり
○証券が発行されている登録新株予約権質者は証券の占有を失うと、新株予約権原簿に記載記録されていても対第三者だけでなく対会社にも対抗できない(質権の性質を重視)
比較で証券ある新株予約権の譲渡は対会社は名義書替え、対第三者は証券の占有
○ 株券
公開会社遅滞なく発行
非公開会社請求があるまで発行しないアリ
新株予約権証券
公開非公開両方請求あるまで発行しないアリ
○ 株主割当の場合に権利を譲渡できない(株主が申し込まなければ失権すると規定されている)
新株予約権無償割り当ては譲渡できる
社債
○社債管理者は複数いるときは共同して権限を行使する
比較で社債管理補助者が複数いる場合は各自が権限を行使する
(社債管理者と社債管理補助者は併存できない)
○ 社債管理者定款記載なし登記なし
株式管理者は両方あり
機関
○ 競業避止は承認なかった場合に損害推定
利益相反は承認得てても得てなくても損害推定(利益相反は直接的に会社に損失が出るため)
利益相反では取締役会に加え監査等委員会も事前承認していた場合の損害推定はなくなる
○取締役会議事録署名義務
・会計監査限定監査役は取締役会出席権限義務はないが取締役会に出席した以上は議事録に署名もしくは記名押印が必要
・会計参与は計算書類の承認をする取締役会に出席義務があるが、出席したとしても議事録に署名または記名押印は不要
○兼任の比較
・親会社の監査委員は子会社の監査役を兼任できる
・親会社の監査役は子会社の監査委員を兼任できない(監査委員は取締役だから)
・取締役会は、3か月に1回以上開催しなければならない
・監査役会は、3か月に1回以上開催することを要しない。
・取締役会も監査役会も決議に参加し議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定される
○会社は自ら責任追求訴訟を提起した場合もしくは株主から責任追求の訴えの訴訟告知を受けた場合
・公開会社の場合は通知または公告
・非公開会社の場合は通知
しなければならない
組織再編
○ 清算の要否
・設立無効、株式移転無効
判決確定した場合は清算必要
(株式移転は新規設立の側面)
・新設合併無効、新設分割無効
判決確定の場合は清算不要
○会社分割の債権者異議
・「分割会社」で承継のあった債権者は原則、必要だが、連帯保証関係等でなお分割会社に請求ができる場合は不要
人的分割の場合は必要
・「承継会社」は常に必要(債務者が増えてしまうから)
○ 事業の一部譲受では親会社株式を取得できない(親会社株式外せるよね)
分割は包括承継の性質があるためOK
○事業譲渡の手続き比較
・債権者異議手続きはない(個別の同意が必要だから)
・株主買取請求はある(一部譲受会社は会社法467の事業譲渡に当たらないから不要)
・差しどめはない
○ 対価不当を合併の差しどめ事由の適否
通常合併、簡易合併では認められない
略式合併では認められる
(通常合併では特別決議がされている)
(簡易合併では影響が少ない)
株式交付親会社が譲り受ける株式の最下限を定めなければならないが、譲り受ける新株予約権の最下限を定める必要はない
○株式会社から持分会社への組織変更ダブル公告できる 事前開示必要 総株主の同意は定款でも変えることができない
合資、合名会社から株式会社に組織変更する場合はダブル公告できない 事前開示不要
総社員の同意は定款で別段の定めができる
○売渡請求の事前事後開示及び無効の訴えの提訴期間は効力発生から
・公開会社6ヶ月
・非公開会社1年
(開示のスタートは通知または公告から)
その他通常の組織再編では非公開会社でも6ヶ月であることと比較)
○売渡請求無効の訴えの被告は特別支配株主のみ
売渡請求無効の訴えの管轄は対象会社所在地
(証拠が多くあるから)
○株式交付において対価で株式を全く無くすことはできない
株式交換において対価で株式を全く無くすことはできる
○株式交換において対価として更に上の親会社株式を交付する目的で親会社の親会社株式の「新たな取得」ができる
株式交付においてはできない
(株式交付においても既にたまだ持っていた親会社の親会社株式を対価とすることはできる)
○株式交換には譲渡制限株承認みなしはない
株式移転もない
株式交換はある
○株式交付親会社は対価である株式以外の財産が20分の1未満であれば債権者異議手続きは不要
(株式交付子会社においてはもともと当事者でないため不要)
更に比較で
・株式交換においては新株予約権の「承継」がありうるため新株予約権付社債を「承継」すると親会社の債務者が増えるため債権者異議手続き必要
・株式交付においては新株予約権社債を債権者として「そのまま譲り受ける」ことがありうるだけであるので、株式交付親会社の債権者が増えることにはならないためその場合の債権者異議手続きは不要
○非公開会社は例外なく簡易株式交付はできない
(必ず株式を交付しなけれず譲渡制限株発行には特別決議が必要であるからならないから)
株式交換については対価として株式を含まないことができるためその場合は非公開会社であっても簡易株式交換ができる
持分会社
○設立時定款据え置きの違い
・株式会社において発起人は、会社の成立までの間定款を発起人が定めた場所に備え置かなければならない
・合同会社にはこれにあたる規定はない。
○組合員と持分会社社員の責任の違い
・組合員の加入前の債務は新たに加入した組合員は負わない
組合員の支払い責任に補充性はない
・持分会社社員は加入前の債務も負う
・持分会社社員の支払い責任は補充性がある
○代表訴訟の原告
・持分会社においても、社員代表訴訟は存在し、当該持分会社が請求の日から60日以内に訴えを提起しないときは.請求をした社員は、訴えについて持分会社を代表することができるが原告は持分会社である
・株式会社の代表訴訟は原告が株主個人
(ちなみに持分会社には違法行為差止めはない)
○合同会社、合名合資会社における無限責任社員がいるかどうかによる比較
・合同会社は資本金減少に債権者異議手続き必要 合名合資会社は不要
・合同会社債権者は5年分の計算書類閲覧謄写請求ができる 合名合資会社債権者はできない
(直接無限責任を負うものがいるため合名合資では不要)
解散
○ 裁判所が選任した清算人は辞任はできるが解任はできない
その他
○公告義務
・株式会社はある 清算に入るとなくなる
・特例有限会社ない
・持分会社ない
・一般社団法人、財団法人ある
(ただし公衆の見やすい場所に掲示が公告方法に加わる。また定款で定めなければならない)
読んでいただきありがとうございます😊