におい。
臭い。
私があなたと初めて会った時、思わず声に出てしまいました。
貴方は漢方薬の薬剤師で漢方の匂いが体に染み付いていました。
貴方と会う回数が増えて私は貴方の仕事場にまで遊びに行くようになりました。
行くたびにとてもガラガラなお店で二人お客さんが来るのを待ちました。
夏になると林檎ジュース、冬はココアを出してくれました。
貴方は私が10になるとき、突然居なくなりました。ずっと咳をしていたので、それがやんで、少しは楽になったのではないでしょうか。
ずっと貴方の仕事場へ通っていた放課後も何もすくことがなくなってしまい、お友達のみほちゃんの家へ遊びに行きました。
臭い、
と、みほちゃんも陽子ちゃんもさとちゃんも言いました。
どうやら私に貴方の匂いがうつったようです。
ちょっぴり悲しくなりました。貴方に会いたくなりました。