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おむすびのお話。

90年代後半から海外で暮らす私は、

当然、空港は何度も行っている。

けれど実は、空港内でのレストランで食事したことは一度もありません。

羽田空港なんかすごくキレイになって、

搭乗客でなくても、デートスポットになるほど飲食店やお店が充実していますよね。

もちろん、魅力的なレストランの存在は知っております。

なぜレストランを利用しないのかというと、

出発の際に、うちの母が必ずおむすびを持たせてくれるのです。

日本に到着した時は、一刻も早く家に帰りたいので、まず空港のレストランに立ち寄ることはないですし、女性なら分かると思いますが、10時間を超えるフライトの後、思うように睡眠も取れずに疲れて、すっからかんに干からびて、まず、誰にも会いたくないですよね。

空港でのお気に入りのレストランはどこどこで、とか、

空港では絶対あれを食べるんだ、と言った話題はよくありますが、

20年以上空港を利用しておいて、まあ乗れない話題です。


最近、海外の人にもBentoが流行っていて、とにかくたくさんお弁当屋さんがあります。

和食のブームも相まって、海藻系にも注目するようになった欧米人なので、以前は黒い食べ物は、見た目で敬遠していたのが、おむすびも流行りだしました。

流行ってもいいんだけど、おむすびは、

「日本のファストフード」

と呼ばれると、ちょっと異議を申し立てたくなります。

もっと、意味ある食べ物なんだけどな、と言いたくなります。


日本には、「氣」というものがあります。

これは、英訳仏訳で困る言葉で、一応訳をあてるものの、ちょっとしっくりこない感じになります。

「氣」は、それほど人々が意識しなくても、あらゆる言葉に含まれていますよね。

気持ち、やる気、元気、短気、正気…

病は気から、気が緩む、気が楽になる、気が気じゃない…などなど

単体の「気」の訳は困るものの、後の言葉は気という言葉抜きに訳すのは可能ですが、元を辿れば、人間が内に持っている「気」が人の性質や健康なんかに影響すると考えられて出来た言葉なんだと思うんですよ。

目には見えないけれど、確かに存在しているもの、だと思うんです。

子どもの頃遠足に行って、お昼に食べたおむすびが美味しかった経験ってありませんか。

それって、私は、お母さんがおむすびを作っている間に、

「楽しんでくるといいな」「無事に帰ってくるといいな」とか、手からおむすびに、無意識に、気を送っているんだと思うんですよ。

おむすびを頬ばると、それを受け取って美味しく感じるのかな、って。

話が飛躍し過ぎているように、聞こえますかね。


日本から海外に出発する私に持たせるおむすびには、

母の気持ちがこもっている。

空港で数ある素敵なレストランに行かないのも、とっても満たされるからなんですよ。

それと同時に、また遠くへ行ってしまう娘への思いもあり、

それを受け取った私の中で、また故郷を離れる実感がありありと湧いてきて、

おむすびを頬ばると男泣きするわけです。


そんなこんなで、おむすびのお話でした。

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ねこの母
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