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記憶の欠片はカプセルみたいにはじける
こんばんは、ねこです。
みなさんいかがお過ごしでしょうか。
わたしはというと、今日は髪を切りに美容院へ行きました。すこし暖かくなってきたので、いつもよりすこし短めに、さっぱりした感じにお願いしますと言って。
とてもいい感じにさっぱりと仕上げてもらったので「ふふん♪」と鼻歌を歌ってしまうような気持ちです。髪が綺麗になるととってもうれしいですよね。
さて、木曜日のエッセイ、今週は香りの話です。
先日「楽しかった思い出、忘れたくないこと、言ってくれた言葉、あの人のもつ香り、グラスや人の手に触れた感触。たった数時間で少しずつ薄れていってしまうのとても悲しいな、写真に撮って記録できない記憶がたくさんある。」というツイートをしました。(飾りたいくらい美しい文章と言っていただけたので、調子に乗って引用しています…)
そのお話について、すこし深く。
香りにはそれぞれ記憶があって、カプセルみたいに閉じ込めてあるもののような気がします。昔聴いていた音楽とか、思い出の味とか、誰かの手に触れた感触とか、そういうものと同じように。
写真に撮って、もしくは絵に描いて、文章にしても。それは記憶にだけ残っていて、記録できないもの。
住んでいた土地の香り、はじめて飲んだお酒の香り、大好きな人がつけている香水の香り、手渡された花の香り、雨が降った後の香り、干した布団のお日さまの香り。他にもいろいろ。
いっそこの香りごと記憶も一緒に持って行けたらいいのに、と思うのですが、きっとそれができないからこそ儚くて美しいものなのでしょう。
わたしたちは新しいことをたくさん体験して、楽しかった記憶をどんどん忘れていく。そんな記憶を絵の具みたいに塗り重ねて、今日も生きている。
でも、記録できないことを悲しむ必要は無くて、きっとまたその香りに出会えたとき、たくさんの思い出がカプセルみたいにはじけて、より大切な記憶になるはずです。
薄く塗られた過去の記憶に、新しい絵の具を乗せて、新しい色を描いていくように。過去は忘れゆくものではなくて、塗り重なるものだから。
大きなキャンバスに重なっていく色たちは、きっととても美しいです。
そんな風に考えたら、一体この命が尽きる頃にはどんな色の絵が出来上がっているんだろう、なんて楽しくなりませんか。
もしかしたら色んな色が重なりすぎて真っ黒かもしれないし、色鮮やかかもしれない、もしかしたら無色透明かも。
悲しかった思い出に寄り添った香りも、またあなたの元に届くとき、重なり合って鮮やかな色になる。だから、今は嫌いな香りでも、嫌いな色でも大丈夫。
塗り重ねて塗り重ねて、より美しい色を見つけましょう。最後に、好きな色ができたらいい。
あなたにとって大切な色は、どんな香りがするのでしょうか。その香りが風に乗ってわたしの元に届いたら、あなたが感じたのと同じくらいわたしの心も柔らかくなるのかな、なんて思っています。
どこかでその香りがしたら、ひっそり教えてください。それからすこし窓を開けて、同じ香りを探してみますね。わたしもその香りに出会えるかな。
今週も、読んでいただいてありがとうございました。また、あたらしい木曜日に。