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乗車した特急電車は、まるで夜空を走る銀河鉄道みたいだった


特急電車が好きです。

例えば、遊びに行った帰りの日。

券売機に数百円のお金を入れて、窓際がいいかななんて考えながら指定席を予約して、きっかりの時間に発車する電車に乗る。席は進行方向を向いていて、足元には余裕がある。
隣に誰も座っていなかったらなおさらいい。

乗車する前に買った温かい飲み物を飲みながら、楽しかった思い出を数えて、大好きな人に言ってもらった言葉を頭の中で繰り返して、今度はどこへ行こうか何をしようか、耳に詰めたイヤホンから流れる音楽と、ガタンゴトンと鳴る音だけを聞いて帰る時間。

そんな、ありきたりな日常におけるちょっとした非日常感がとても好きです。

学生だった頃は、毎日乗るものだから特急なんて乗れなかったけれど、今は出かけることも少ないしいいかなと、すこしの贅沢をしてしまう。
お金をたくさんは持っていないけれど、それくらいの余裕があれば幸せかな、とも思ったりします。

特急電車は夜をぐんぐん進んでいって、窓の外には街の光だけが星みたいに流れて、まるで銀河鉄道に乗っているみたいだなんて考えて。

あわよくば、この夜の向こうのどこか遠くへ。

あわよくば、わたしを誰も知らない場所まで。

あわよくば、あわよくば。

そんな風に思いながら、「銀河鉄道の夜」でジョバンニが旅した銀河はどんなだったかな、さぞや美しかったんだろうな。
子どもの頃に読んだ以来だから、もう細かくは思い出せないな、なんて考えていたら、いつの間にかわたしの住む街に着いていて。

身体はたしかにここに在るけれど、心は果てしない夜の向こうへ旅をしているような気持ちになれる、そんな旅をするために、わたしはまた券売機に数百円を入れています。

すこし前に書いた「特急電車」という詩は、まさにそんな気持ちを誰かに渡すために、綺麗にラッピングするように書いたものです。

例えば、友達、恋人、パートナー、親友…いろんな呼び方があると思いますが、とにかく自分にとって大切な人。

そんな人と一緒に遊ぶこと自体がもちろん楽しくて、いい日だったなあと思うことはたくさんあるのですが、一番その人への愛を感じるのは実は帰りの電車だったりします。

遊び終わって大切な人と別れた後、ゆっくりわたしのもっている愛を考える時間。きっとそれも、大切な人と過ごしている時間だと思うので。

もし、遊びに行っておうちに帰るまでの間に特急電車が走っていたら、ぜひすこしのお金を払って乗ってみてください。
乗る前には、好きな飲み物をピッと買って。

きっとそれが銀河鉄道への乗車切符になります。身体は未来へ向かっているけれど、過去の思い出たちを巡る旅へ。

ではまた、木曜日にここでお会いしましょう。
おやすみなさい。いい夢を。

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