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バルサDF陣のビルドアップ術/ビルドアップとは
ビルドアップ術
組み立て能力とは?
よく勘違いするのが「テクニックある選手」=「ビルドアップ力がある」という定義。これ、今回の大前提になるんですけど、全く違います。バルサの選手となると、大体はビルドアップ力ある選手なんですが、例えばピケとか。ピケの場合は自分で持ち運んで相手がプレスに来たところでリリース。高い位置までできるだけ運ぶことで組織全体をプッシュアップできるよ、という追加効果を生み出せます。この追加効果を生み出せるかがビルドアップ力があるということです。
ここで、テクニックはあるけどビルドアップ力がないとはどういうこと?を例に出したいと思います。筆頭なのがヴァランですね。ヴァランってテクニックはあるのでパスもズバッて通せるし、奪われることも少ない。ただ追加効果を生み出せないんですよね。
レアル時代のヴァランでよく観られたプレーなんですけど、ボールを持つと基本サイドへ運びます。
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相手を引きつけるんですけど、リリースするタイミングが無くて結局サイドで囲まれる。
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バルサは結構コレ狙ってた。するとヴァランは
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奪われないんですよ。だけど後ろに逃げて
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ラモスに展開する。この展開力も凄いんですけど、嵌められているからラモスにもプレスが掛かってる。これをラモスが独力でかわすから何とかなってた。奪われていないということで、実はビルドアップ力はないよということがカモフラージュされてたんですね。こういうことです。
そしてもう1つの例がラングレ。
ラングレもパスは上手い。だけど優位性を作ることができない。1年だけレギュラーだったけど次からアレレ?と急に出れなくなったのには理由があります。
イニゴもたまにあるんですけど、受け手が相手プレスを受けながらパスも受けるという流れ。
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ズバッとパスを通すことは出来ても、受け手にはスペースもなければ局面数的不利なので打開するにはパワーが必要。ラングレの時はここの受け手がイニエスタだったので事なきを得てたんですけど、そうじゃなければ確実に潰される案件。
これがパスは上手い、テクニックはある、だけど組み立ては出来ないという例です。それでは見ていきましょう。
バルサのビルドアップ術個人編
■メッシがブスケツを求めた理由
グアルディオラはバルセロナを引き継いだばかりの頃に起きた出来事、4回目のトレーニングセッションの一コマを今も覚えている。メッシがすっと近づいてきて、耳元でこうささやいてきたのである。
「監督、セルヒオはいつも僕のチームに入れてくださいね!」。メッシはセルヒオ・ブスケの戦術眼の高さをあっという間に見抜き、どの練習でも、常に自分のチームに入れてほしいと頼みに来たのだった。グアルディオラは、メッシが自分と同じサッカーの見方をしていることに喜びを感じ、アルゼンチン人の天才選手に対する信頼をさらに深めた。
発行 FromOne
著者グレイム・バラゲ 訳田邊雅之
317項より引用
ブスケツの凄さは、動画とかでも分かるんですけど相手のプレスの無効化にあります。
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CBからボールを受けたブスケツ。相手がプレスに来ると
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相手が来たらまずかわす。1人剥がすと同時に、次に来る2人目に対して正対。相手をピン止めする。
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2人目を封じることで受け手を動かすことができる。これってすごいんですよ。相手を動かす封じることは出来ても、その応用として味方も動かすことができる。それも誘導するかのようにスペースへ動かしてパス。これができるからブスケツは伝説なんですね。少なくとも2人は消すことができる。凄いときは一度に3人も消すことができる。そりゃ受け手となるメッシはブスケツを求めますわ。これがビルドアップの最上級になります。
■出すべき場所は分かっているアラウホ
バルサのCB陣で足元がないとされるアラウホ。
元々ラ・マシア出身ではないのでちょっとプレスを受けるだけで回避しようとしていました。ただ、最近ではバルサに慣れてきたのか、周囲と比べれば足りないところありますけど、出すべきところやここに出せば流れが変わるっていうところは分かってます。
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そんなに特別なことはしないんですけど、相手を引きつけて
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"フリー"な味方、または逆サイドへ。フリーである味方にパスを出せるのがラングレとの大きな違いですね。
僅かなスキルかもしれないですけど、プレスを受けながらもフリーな味方を探し出せるスキルは特筆したものがあります。
とはいえ、舞台はバルサです。多分他のチームだったらアラウホはビルドアップできる方だと思います。周りが化け物すぎて、あと足元が多少おぼつかないところもあるので「あれ?アラウホ下手じゃね?」と見えてしまうものなんです。
このアラウホのプレーの最上級をやっているのが、今一番売り出し中の彼です。
■ビルドアップの天使、パウ・クバルシ
現在のバルサにおいて最もホットなビルドアップ隊員なのがクバルシ。若干17歳!!
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そんなクバルシのビルドアップなんですが、ピケみたいに極端に前進して全体をプッシュアップするというわけではないです。正対した上で、ロングレンジのキラーパス出せるみたいな。ビルドアップに関してはシャビアロンソに似ているかもしれない。
よく観られるプレーが、
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キープして相手を引きつける。すると味方がわずかでもスペースに動く。
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僅かなスペースでも、そのパスコースがわずかな隙間しかなくても射抜いてくるパス制度の良さ!!相手もまさかそこを射抜くわけないよな、だって充分絞っているんだもん。そこをパス制度だけで攻略してくるという異次元レベルです。アロンソもパスコース無くても味方がいい場所に動きさえすれば絶対に通してくる。レンジも関係なく。
クバルシは、アロンソのゲームメイク能力を持つCBって感じで、今後もしかしたら伝説的なCBになっていくんだろうな。アロンソのCBって大してメリットなかったんですけど、しっかりと守備能力も備えていてかつゲームメイクもできたらマジでエグイ。
■現状ではNo.1ビルドアップ!クリステンセン
ビルドアップ力という意味では、現状で1番なのはクリステンセン。
クリステンセンの場合、ピケと同様ドリブルで運べるのとロングレンジでも左右に散らせるというところ。
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クリステンセンが運ぶことで回りが離れスペースを生み出す。これで全体を押し上げることができると同時に相手DFブロックを配置的に乱していく。
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相手がしびれを切らしてプレスに来たらリリース。空いている味方、もしくはマークの受け渡しがスムーズならば逆サイドへ一気に飛ばす。
フリーな味方を作れるので、優位性を生み出すことに関してはクリステンセンが最強です。
そんなCBでは最強のクリステンセンでも、アンカーだと途端にビルドアップから避けていくのにはやっぱ理由があって、CBからドリブルで持ち上がれるのは、後方に相手選手がいないからなんですよね。
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CBとボランチなんて全く違うんですよ。360度からプレスを受けるなんて耐性はクリステンセンにはないんで、ビルドアップから避けていくというのはしょうがないんですよね。
■新生!セルジ・ドミンゲス
最後にちょろっと紹介したいのが、プレシーズンで出てきたセルジ・ドミンゲス。
別に今のところはクバルシみたいにエグイパス制度を持ってるとかはないんですけど、ラ・マシア産だっていうところは垣間見えていて、
アメリカツアーのミラン戦から
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クリステンセンからセルジへ。
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ボールキープして相手を引きつける
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充分に引きつけてからリリース
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スペースへ。
このあたりの一連の流れはラ・マシア出身者ですね。めちゃめちゃ個性強いわけではないんですけど、覚えておいて損はないかなと。パスの受け手に対して優位性を生み出せるというのはバルサのDFです。
■ビルドアップ術
パスが上手いとか、テクニックあるとかは、実はビルドアップにおいて必ずしも必要なスキルというわけではないんですね。足元が上手いとビルドアップが上手くいきやすいってだけで、味方に優位性を提供できるかがビルドアップです。今日はこれを覚えて帰って行ってください。
NEXT
色々見ていきたい企画はたくさんあるんですけど
・浅野拓磨ラ・リーガ漫遊記
・レアル・マドリード進捗状況
・ソシエダの根本的問題
のどれか
Thanks for watching!!