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あなたに会えてよかった 小泉今日子

予告通り、小泉今日子の「あなたに会えてよかった」を採りあげる。
当初はこの歌を「別れちゃったけど、一番の思い出だよ」という普通の恋愛ソングと受け止め、聴き手の失恋の痛みを癒すような、いい曲だと思っていた。
しかし2017年、自分の父親を念頭に作詞したものだと小泉自身がラジオ番組で告白。
この「あなた=父親説」は一気に広まったのである。

それを知った頭で歌詞を見ると、特に娘がいる父親にとっては実に心に沁みるだろう。
しかも「サヨナラさえ上手に言えなかった」とか「思い出が星になる」など、相手が既に亡くなっていることを仄めかすくだり、感涙なのである。
「時がすぎて、いま心から言える。あなたに会えてよかった」
もーたまらん。泣けるのである。
「あなたはずっとそのままで、変わらないで」
もー許して。
そして必殺の「思い出が星になる」。
このくだりはイントロのリフレインにもなっていて、曲の中でも白眉。
聴くたびに感動の鳥肌を禁じ得ない。

そしてこれは大事なことだが「あなた=父親説」を知る前から、これが名曲だったことだ。
筒井康隆は「名作は誤読の自由がある」と言った。
つまり良い作品ほど様々に解釈できる懐の深さがある、ということだ。
聴き手ひとりひとりの受け取り方で、「あなたに会えてよかった」は存在している。

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