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Pretender Official髭男dism

いつものように「Pretender 歌詞」と検索しようとすると、候補に「ひどい」と出て驚いた。今を時めくOfficial髭男dismをスターダムへ押し上げたヒット曲なのに、である。
何がひどいのか見ると、みな「君は綺麗だ」の部分でずっコケるらしい。
その部分までは、いつもの髭男らしい歌詞世界なのだが、「君は綺麗だ」だけが唐突であり、頓珍漢な気がする、というのである。

髭男はアテ書きを好むアーティストだ。
Pretenderと同様、コンフィデンスマンJPの主題歌「ノーダウト」には「神様もハマるほどの大噓を」とか「華麗に浴びるわ9桁(1億)のビル(紙幣)シャワー」などの歌詞があるし、「I LOVE...」はTVドラマ「恋はつづくよどこまでも」の登場人物、循環器内科医の天堂そのものである。
そうなるとPretenderもアテ書き、と思うのが普通だろう。
TV版コンフィデンスマンJPを全話しっかり見た上で、Pretenderを作ったのなら語り部は誰か。
私は東出昌大演じる「ぼくちゃん」だろうと考察した。


長澤まさみの当たり役ダー子

歌詞を見ていこう。
「もっと違う設定で、もっと違う関係で」とあるのは、詐欺師チームのリーダー「ダー子」のシナリオに沿って行動していることを指している。
「出会える世界線、選べたらよかった」も、ダー子のシナリオは絶対で、ぼくちゃんに選択の余地が無いことを憂いている。

ちょっと話は逸れるが、この「世界線」という言葉、最近流行っているような気がするがこの曲がその流行にドライブをかけたのではないか。
ちょっと前に政治経済分野で「加速」という言葉が流行ったが、それの始祖はブルーハーツの名曲「TRAIN-TRAIN」で間違いないだろう。
例の「ブルースは加速していく」である。
この部分にシビれた少年たちが大人になり、施策方針プレゼンや国会演説などで「加速」したり「加速」させたり、あちこちでコスりまくっているのだ。

話は戻ってPretenderである。
「君の運命のヒトはぼくじゃない 辛いけど否めない でも離れがたいのさ」。
ドラマではぼくちゃんが「もう辞める」と部屋を出ていくのがお約束になっているが歌詞でも「グッバイ」と言っておきながら「離れがたい」、つまりチームにすぐ戻ってくることが示唆されている。

冒頭の「君は綺麗だ」も、ぼくちゃんのセリフであるから、わざと頓珍漢を言わせているのだ。
詐欺師チームでのぼくちゃんは、お人好しで、詐欺師としてはまだまだ青いいわゆる「弱い輪」。
天才ダー子のシナリオは、それを織り込んだ上で、極めて精緻に組み上げられている、というのがプロットとしてのミソでもある。
私好みのキャラはダー子だが、髭男は作詞する上でぼくちゃんを選択した、ということである。

そもそもPretenderとは、詐欺師・ペテン師という意味の単語なのだ。
この曲がアテ書きであることは、曲名が既にヒントとなっているのである

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