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Hate tell a lie 華原朋美

華原朋美の「Hate tell a lie」を採りあげる。
一連の小室ヒットの中では最も好きな曲。オケが抜群にカッコいい。
リリース当時、華原と小室は私生活でも交際しており、堂々と公言していた。
この曲について語る場合、そのことは避けて通れない。
なぜなら「Hate tell a lie」は、作り手から歌い手へのメッセージソングであるからだ。

歌詞を見ていこう。
以下、あなた=小室、わたし=華原と置き換えて欲しい。
「何から何まであなたがすべて、わたしをどうにか輝かせるため
苦しんだり悩んだりしてがんばってる」
自分でよく言うよ、とは思うが、本人はいたって真面目である。
その後に続く「Let me do one more」のリフレインが実にカッコいいのだが、ここで言う「もう一度やらせて」は、華原の懇願と受け取れる。
つまり、華原は何かしくじっているのだ。
もしくは恋人である小室の心証を害する状態だった、ということだろう。

タイトルの「Hate tell a lie(嘘をつくのが嫌い)」は華原の性格。
そしてチラリと書かれている「Hate get a pill」。
pillは「丸薬」という意味もあるが、英語圏では通常「避妊薬」の意で使われる。
嘘がつけない性格で避妊も嫌いとなると、芸能界を生き抜いていくのは危なっかしいだろう。
うまくコミュニティに入れない華原を、小室は心配しているのである。

「なんだって飲みすぎは良くなくて、ほらそこの飲んだくれ、飲みすぎなあの子を助けて」は、この曲で一番奇怪な部分だ。
あの子=華原、と仮定すると、一緒に(酒を)飲んでいる男に対して「いい大人なんだから、無謀な飲み方をする若い子をたしなめてやってくれ」ということになるか。


小室最後のミリオンヒット

この曲がヒットしている当時、歌いにくそうで、苦しそうな様子が気になっていた。
この子、こんなに下手だっけ?とも思った。
小室は華原の得意な音域、譜割りを知り尽くしているはずなので、わざと歌いにくい曲にしたのだ、と今は分かる。
「荒れた生活を続けてたら、どんどん歌えなくなるよ。それでもいいの?」と叱咤しているのだ。

優れたミュージシャンは、曲を使って会話するのだなあ、と感心するのと同時に、この曲から実に深い愛情を感じてしまうのである。

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