初めての小説
「月の三兄弟」(仮)
昔々あるところに月の国がありました。月の国は月の神(仮)と呼ばれるそれはそれは美しい神様が統治をしていました。月の神に逆らうことができるものは月の国住人の中には1人もおりません。それほど気高いお方なのです。月の国からは下の世界、(人間界?)がよく見えました。(人間界からは霧?によって見えない。)気高い月の神は下の世界を見ることはあまりしませんでしたが、時々屋敷の窓から下の世界を暇つぶしのように眺めることがありました。眺めていると、下の世界の悪きことも良きことも目に入ってきます。気高い月の神はその清らかな目に映る世界が汚く見え、すぐに眺めるのをやめ、屋敷の奥へと入ってしまわれました。
しかし下の世界にも月の神のお力は一部に満ちておりました。ですから、月の神は自身の力が満ちている部分は統治しなければなりませんでした。なぜなら、月の神の役目とは自身の力が満ちているところを守り、育てることだからです。ですが月の神は月の館に住まわれており、月の国の中でも滅多に姿を現しになりません。下の世界にもお姿を表しになったことはありません。下の世界に行くと身が汚れてしまうからです。そこで月の神は下の世界に使者をお送りになりました。その使者とは月で伝説を描き留めていた書記官とその家族です。書記官一家は下の世界へ降りると月の神の力が満ちている国の国王、そして王族となり月の神に変わって統治をしました。ところが他にも月の神によって送られた使者がおりました。月の神の3人のご子息と1人の御息女です。最初に送られたのは月の神のたった1人の御息女であらせられる雫の宮様です。雫の宮様は聡明でお美しく、そしてお優しい方です。そんな雫の宮様が向かわれた先は月の神のライバルである日の巫女が統治をされている倭の国の日の巫女の子孫がいらっしゃる倭の国館です。倭の国館は月の神の力は満ちておらず、反対の日の巫女の力が大いに満ちております。そんなところに雫の宮様が向かわれた訳は日の一族を監視し、月の神に報告するという役目を月の神よりおおせつかったからであります。3人のご子息は雫の宮様とは異なる送られ方をしました。なぜなら3人のご子息はいずれもまず下の世界でお生まれになり、その後月の神のご子息と認められたからであります。まず、月の神のお子とは高貴な存在であり、そう簡単にはご誕生になりません。実際、月の神には数百年の間お子が1人もご誕生されておらず、ご兄弟の中で一番年上である雫の宮様がご誕生になった時はもうそれは奇跡と国中で大騒ぎでした。ですのでもうお子はお生まれにならないだろうというのが月の国の住人の考えでした。しかし雫の宮様がちょうど12のお年になった時に1人目のご子息であらせられる器の帝がご誕生しました。雫の宮様がお生まれになってからわずか十数年でもうご子息がご誕生されたのです。それから器の帝が齢10の時に次男が、齢14の時に三男がご誕生されました。
器の帝は数えて5歳の時に月に召され、月の神のご子息の称号を得られました。それから2年間の月日を月でお過ごしになられ、7歳の時に月の神に変わって下の世界の国を統治している書記官の元へと送られることとなりました。月の国から下の世界へと降りられる時は7人の男児のお付きの者と同じく月に来ていた書記官の2人の娘と共に降りられました。しかし降りる時に不具合が生じ、器の帝は倭の国へと、7人の男児たちはそれぞれ違う場所へと書記官のふたりの娘だけは予定通りの場所に降りられました。
さて、まず器の帝は日川財閥という下界のそれは大きな財閥に落ちていき拾われました。そこでバイオリンを弾く美少年として下界のものに知れ渡りましたが、日川財閥はそんな子供はいないという姿勢を貫きました。しかし、嘘というものはすぐに見破られるもので先ほども申しました通り和の国館へと送られてしまわれました。そこから器の帝は倭の国館の月櫓でお育ちになられました。次男様は誕生されてすぐにオレンジの国の王子としてオレンジの国王家に引き取られることとなりました。三男様は月の神の分身である狼の群れに引き取られることとなりました。三兄弟はそれぞれ飛ばされた場所で、身分を隠し、偽りながら暮らしていくこととなってしまわれたのです。
ーそれから10年後、ここは倭の国館ー
「器様、今日は日の巫女の御息女の光明の宮様に挨拶に行かれる日でございますゆえ、衣を取り替えさせていただきます。」従者がそう言うと器の帝は音も出さずにお立ちになり、 「うん。今日は姉上も来られるのか。」 「はい。雫の宮様もご挨拶されるとのことでした。」ちなみにお断りを入れておきますが、器の帝は雫の宮様が大好きで、下の世界でいう、いわゆるシスターコンプレックスというものであります。ああ、おいたわしや・・・
お着替えを済まされ、光明の宮様の元へと急いでいた器の帝に声をかけたのはまだ幼さを残す可憐な少女であった。「器の帝、ご機嫌麗しゅう。」 「ああ、今日もお綺麗ですね。椿桜様。」椿桜と呼ばれた少女は頬を赤く染めて俯きながら、「まあ、そんなことはございませんわ。」「器の帝様が大層気にかけておられる雫の宮様にはまだ及びませんわ。」ここでもお断りを入れておきますが、椿桜様は器の帝の大ファンであらせられます。そんな可憐な少女と上部だけのお世辞を言い合いながら器の帝は光明の宮様の館へと到着されました。
「器の帝様、椿桜様、もうしばらくお庭の方でお待ちください。」
「どうかしたの?」
「いえ、お支度がまだなだけにございます。」
「そう。」
しばらく庭で待っていると、従者が来て器の帝一行を館へと案内し、座り、待つように伝えました。
光明の宮はすだれの向こう側にゆっくりと頭につけているかんざしをしゃらんと鳴らしながら座られました。
「今日も挨拶ご苦労である。」
「ははっあ」 これらのやり取りを交わされると光明の宮はすぐに奥へと引っ込んでしまられました。
「はあ、きょうはいつにもなく機嫌が悪いな」
「器、そのようなことは口に出すことではない。以後しかと気をつけよ。」
器の帝に冷たくも優しい口調で注意をされたのは我らが雫の宮様で荒らせられます
「姉上、申し訳ありませんでした。」 器の帝も素直に頷くしかございません。