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仕事とスポークンワーズ②(声優専門学校)

※この記事は前回の内容「仕事とスポークンワーズ①(中学受験塾)」の続きです。

中学受験専門塾での正社員の仕事は年間休日が90日程度(え…?)。とてもじゃないけど、劇団主宰 兼脚本・演出との両立は図れませんでした。そこで、20代半ばに転職したのが声優の専門学校 東京メディアアカデミー(現在の名称は東京声優・国際アカデミー)。社員として、学生たちのクラス担任と学校広報を担当しました。

声優業界を支える仕事内容(2005年〜)

初めて飛び込んだ芸能関連の仕事。声優の専門学校のクラス担任の仕事は、数十人の学生たちの出欠管理やオーディション指導がメインでした。また、ボーカルやアテレコの授業ではミキサー卓に座って音出しやRECを行います。ボイスサンプルの収録も放課後に担任がやっていました。学内のイベントでは舞台監督をやるなど、だいぶ演劇経験が活きる職場でした。むしろ演劇を知らないと業務ができないくらい。講師陣はプロの声優やナレーター、またはボイストレーナーやディレクターで、担任はいわば学生たちの身近なマネージャーのようなポジションでした。

担任の仕事で鍛えられたスポークンワーズのスキルは、芝居に対するコメント力。オーディション対策がある日はほぼ1日がかりで一学年分(約90名)の自己PRとセリフの読みなどを見ることになります。講師1名では対応しきれない部分もあるので、担任も全員分の感想をメモし、最低でも自分の担当クラスの面々には短い面談を通してフィードバックを行います。

ライフワークとして土日は演劇の演出をやっていましたが、猫道一家の出演者を演出するのは難しくありませんでした。重要なキャストを担う俳優は皆経験があり、俺との関係性もできていたため、いろんな要求が伝わりやすかった。しかし、学校で相手にするのは、上京したてで初めて芝居に触れる18〜19歳の青年たちです。アニメやゲームには日々触れているけど、人生経験や学識があまりない。だから、言い方を考えて一人一人に優しく示唆する術を身につけました(笑)。これまで、中学受験の塾や猫道一家では、デカい声で勢いよく指示を出し、アジって盛り上げて強引に場を作っていましたが、ここで少しだけ「聴く」ことや「相手の様子を感じとる」ことを覚えました。

今でもスラム(ポエトリーのバトル)やコンペで審査員を頼まれたりすると、その場でスラスラとコメントが出ます。ベースにはこの職歴で鍛えられたコメント力があると思います。コメント力は重要なスキルでした。担任の声かけ次第で、卒業時に合格するプロダクションが左右され、その学生の役者人生を変えるかもしれないのです。

卒業時に学生に宛てた手紙。クラスの学生一人一人に対し、内容を変えて激励していた。


学校広報とスポークンワーズ

担任業務と並行して行わなければならなかったのが広報としての仕事です。いわば、新規学生の入学に向けた営業活動。主にパンフレットや広告、webページの作成やイベントの実施です。

広報で身につけたスキルは、のちに大変役立ちました。講師業だけをやっていては身につかなかったと思う。教育業は基本「実体のないものを売る」うさん臭いビジネスです。ですから、売り手の言葉の使い方(紹介の仕方)が重要。webに載せる文章や、体験入学の学校説明会で語る内容は、声優に興味のあるティーンに対して誠実に、かつ魅力的に映るように構成しなければなりません。いくつも広告の文章を担当し、学校説明会のスピーカーを繰り返すことで、受け手に合わせた適切なアピールができるようになっていきました。「顧客のニーズを汲む」姿勢を早いうちに身につけることができたのは僥倖で、のちにMC稼業をやるにあたってもプラスになりました。

マス対コア

スポークンワーズから少し話が逸れますが、アニメや洋画やCMにおける「声の仕事」というメジャーシーンの一端に触れることができたのも新鮮でした。クラス担任はアングラ演劇出身でDIYで自分のユニットをやっているのに対して、学生たちはオーディションを受けてメジャーで勝負しようとしているのです。学生たちと仲は良かったけど、向いている方向が真逆!学生たちを見ていて、「キャスティング権を誰かに握られて芸術をやる」というのは、自分の中では違和感がありました。その違和感は猫道としての活動に影響を与えたと思います。

余談ですが、当時は自分の興味関心が演劇からラップに移り始めた頃で、ホームルームではUMB2005のDVDを観せたりしていました(←ええと、俺なりの一般教養の授業です)。当時はまだラップが市民権を得ていない2000年代半ば。初めて観るMCバトルの映像に学生のほとんどはポカーンとしていました。まさか後にMCバトルが地上波で放映され、声優がラップして人気を博す未来が待っているとは俺も思いませんでした(笑)。

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