市長になったネコ

人間というものはかくも猫が好きな生き物でござる。
「犬は人につく、猫は家につく」という言葉が日本にはある。たしかに犬はとても忠実な生き物であるな。人間に好かれて当然に思う。
一方、猫は自分勝手で自由な性格、犬と正反対と言ってよいほど逆の性質であったりするでござる。
それでも人間は猫が好きなのである。
中でも町中から愛され、世界中に知られた猫がおることをご存知だろうか。
知っている人はタイトルを見て「あ、懐かしき」と思うだろう。
ということで今回のよもやま話は、その猫の話をしようと思う。
ふわっと聞いてくれればよい。

猫のスタッブス

1997年4月12日、アラスカのタルキートナ という町にある雑貨店。
このお店の店主であるローリさんは、お店の駐車場で生まれたばかりの子猫たちが入った箱を見つけた。
ローリさんはその中でしっぽがなかった猫を飼うことにしたそうな。
その猫は「スタッブス」と名付けられたいそう可愛がられた。
可愛がっていたのは店主だけではない。地元の住民からお店に来るお客さんまで、たくさんの人がスタッブスを愛したそうな。

タルキートナの市長さん

スタッブスが雑貨店に来て間もない1997年7月、住民たちから「スタッブスを市長にしたらどうか」という声が上がり、なんとスタッブスは市長に選出されることになった。（タルキートナ に市長はいないということから、冗談半分での選出である）
とんとん拍子でスタッブスはタルキートナ の名誉市長に任命された。
それからというもの、スタッブスの人気は止まることを知らず、一目スタッブスを見ようと雑貨店には多くの観光客が訪れたそうな。
テレビの取材もあってか、世界中からファンレターもたくさん届くようになり、スタッブスは雑貨店の看板猫から、タルキートナ の看板猫となったのだった。

スタッブスの家「Nagley's General Store」

昼寝好きの名誉市長

たくさんの人間に愛されすくすく育ったスタッブス。
いつの間にか16年もの歳月が経っていた。立派な老猫である。
晩年はお店に顔を出すことも減り、家でゴロゴロしていることが多かった。
歳だからというよりも、もともと家ゴロが好きな猫だったようだ。

大事件

2013年8月31日、スタッブスは犬に襲われてしまう。
大怪我を負ってしまったスタッブスは生死をさまよった。当時の報道では胸骨を骨折し、肺に穴が開くという命にかかわる大怪我であったそうな。
このニュースは世界中に拡がり、スタッブスを助けようと多くの人間が寄付をしたのだった。

世界中の祈りが通じたのか、スタッブスは命を取り止め、無事退院することができた。
ワイングラスに入れたイヌハッカ（日本では西洋またたびとも呼ばれている）を混ぜた水を飲んでいる写真が有名である。

名誉市長スタッブス

大きな怪我にも負けずに生きたスタッブスも、雑貨店に来てから20年の歳月が経った。
１日のほとんどを家の中でゴロゴロして過ごしていた名誉市長。
スタッブスが名誉市長になってからタルキートナ に訪れる観光客は増え続け、雑貨店には毎日30~40人ものお客さんが来店していたそうな。お客さんは皆一様に「市長さんに会いたい」「市長さんはいらっしゃいますか？」と店主に話かけている。
そんな毎日を過ごしていたスタッブスだが前述の通り、晩年はお店に顔を出すことも減ってしまい、名誉市長に会えなかったお客さんも多かったことだろう。

2017年7月20日、スタッブスはいつものように一緒に暮らしている子猫と眠りについた。
そして翌日21日朝、店主が動かなくなったスタッブスを発見したのだった。

今もなお。

2017年7月、静かに眠ったまま、20年と3ヶ月の生涯を終えた名誉市長スタッブス。数えきれないほどの人間に愛された20年であった。
2020年になった現在でもスタッブスが暮らしたタルキートナ には、多くの観光客が訪れている。

今回のよもやま話はこれで終わりである。
スタッブス名誉市長に興味があったら少し調べてみると良いぞ。
もっともっと詳しくスタッブスを知ることができるやも。
ちょいと長くなってしまって申し訳ない。
ちなみに画像はWikipediaなどからお借りしたものである。

さて、次回はもっと簡潔にまとめられるように頑張ろうかの。

読んでくれてありがとう。