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アプリ課金のインボイスをどのように出すか|多分最も楽な方法

以前投稿したアプリ課金のインボイスは誰がだすのか、という記事がよく読まれているらしい。それほどインボイス制度開始に伴って、この件で困っている人がいるのだろうなと推測する。
ネットを徘徊していたら、このアプリ課金のインボイスをどうするかを解決する一番楽だと思われる方法を見つけたので、共有したい。

私は専門家ではなく、単なる一経理パーソンであるため、この情報に基づいて行ったことに対する損害の責任は取れませんのであしからず。
(誤りがありましたらご指摘いただけると幸いです。)

アプリ課金に関するインボイス(ここでは領収書がインボイスに当たる)についての基礎的な情報は、過去に投稿した以下の記事でご確認いただけると幸いだ。


要約

インボイスは、一つの書類で必要事項を網羅しなければならないわけではなく、つながりのわかる複数の書類で必要事項が網羅できていればよいので、多分最も簡単と思われる方法は、AppleやGoogleから出てくる決済時の領収書や決済履歴を「課税資産の譲渡等の年月日(=取引年月日)の事実を示すもの」として扱い、インボイスに必要なその他の事項(登録番号と販売するすべてのパターンのサービス内容、価格、税額、適用税率を記載した料金表)を記載した規約とともにユーザに保管してもらえばよい。

前提

アプリの販売者・アプリ内での有料サービスの提供者が、適格請求書発行事業者の場合、ユーザから適格請求書(以下インボイス、ここでは領収書がインボイスに当たる)を求められた場合は、発行を断ることができない。
Google PlayやApp Storeなどで販売しているアプリについては、GoogleだったりAppleが販売者なのかと思いきや、アプリの開発者が販売者となるので、GoogleやAppleがインボイスを発行する義務はなく、あくまでもアプリの開発者が適格請求書発行事業者の場合は、開発者でインボイスを出す必要がある。
(念のための補足ではあるが、適格請求書発行事業者でない開発者はインボイスを発行する必要はない、というか発行できない。)

このとき、AppleやGoogleが気を利かせて、インボイスの代理交付か媒介者交付特例を使用して、開発者の代わりにインボイスを出してくれるといいのだが、制度開始まで1ヶ月を切っても、今のところ公式のアナウンスもないし、どうもそういうわけではないらしい。
ということは、開発者が自前で求められたらインボイスを出さないといけない。

簡単な方法

インボイスの発行依頼をユーザから受け付け、インボイスを作って発行する。
さらっと書けば簡単だが、別のオペレーションを追加しなければならず、ただただ面倒だ。

しかし、いちいち発行依頼を受け付けなくても、インボイスが発行できる方法があった。
さすが会計ソフトの会社だけあってよく考えるなと思ったのだが、マネーフォワード社のアナウンスにその方法を見つけた。

https://support.me.moneyforward.com/hc/ja/articles/22106964738457

端的に言うと、規約に適格請求書発行事業者登録番号と適用税率を書いておき、規約とあわせてAppleやGoogleの領収書や決済履歴を保管して、インボイスとする方法だ。
(サイト上にはApple ID決済はインボイス対応する旨書いてあるが、本当だろうか……)

実はインボイスは、一つの書類で必要事項を網羅しなければならないわけではなく、つながりのわかる複数の書類で必要事項が網羅できていればよい。
上記のサイトにも参照として記載があるが、国税庁のQ&Aにもその方法が案内されている。

国税庁Q&A 問93
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=142

Q&Aでは家賃の引き落としのインボイスに関することだが、値段が決まっているもので、毎回インボイスを出したくないときには、この方法を使うことができそうだ。

決済時の領収書や決済履歴を「課税資産の譲渡等の年月日(=取引年月日)の事実を示すもの」として扱い、その他の必要事項は、規約に記載する。
単純ではあるが、とても楽な方法だ。

規約がない場合は若干大変ではあるかもしれないが、一度作れば、販売価格の変更に注意してそのまま運用できる。

また、アプリ課金の場合は、基本的に価格設定が変動せず一定となっているはずなので、インボイス要件を網羅するように、登録番号と販売するすべてのパターンのサービス内容、価格、税額、適用税率を記載した料金表を作っておけば問題なさそうだ。
一点留意したいのが、キャンペーンなどで割引価格で販売するときで、規約に記載している価格と違う価格で販売する場合は、その価格に対応した料金表も必要となってくるはずだ。

余談

アプリ販売に係るインボイスは、適格簡易請求書でもよさそうだ。
「不特定かつ多数の者に課税資産の譲渡等を行う事業」にアプリ販売も当た
ると考えられる。

国税庁Q&A 問25
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=48

だとすると、金額に関しては、適用税率か税率ごとに区分した消費税額のどちらかを記載すればよいので、結構規約に記載すべき内容が省ける。

国税庁Q&A 問56
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf#page=83

マネーフォワード社は、規約に登録番号と適用税率を記載する旨アナウンスしていることからも、アプリ課金に関して発行すべきなのは適格簡易請求書だと考えていそうだ。
(マネーフォワードMEは、家計簿アプリでプレミアムサービスを利用する場合に課金するタイプのサービス)


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