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ゲーム実況に人生救われた話

子どもの障害がわかってから、同じ境遇の人たちとたくさん知り合った。
保育園で、療育の場で、インターネットで。

それぞれ支援学校や支援学級へ進学し、病院、療育、習い事、塾、薬、サプリメント、その他さまざまな情報を共有するゆるいコミュニティが形成されていた。

子どもたちが成人した現在、振り返ると出会った親たちの半分は離婚したか、精神を病んだ経験があるか、その両方かだ。私の知る限り。

たぶん人が背負える精神的負担には各自上限があり、超過すると家庭が壊れたり、心が壊れたりするのだ。


私もご多分に漏れず悩みすぎて夜眠れなくなった時期があった。
布団の中で朝まであれこれ考えをめぐらす日々が続く。
仕事をやめて息子のバックアップに専念したのもよくなかったのかもしれない。
一日中心配事が頭から離れなくなってしまった。

そのうちに不意に動悸がしたり息苦しくなったり、パニック障害のような症状が現れはじめた。ヤバイ!


心療内科へ行くと、医師は「お母さん頑張り過ぎないでね」と言いながら抗不安薬と睡眠薬を処方してくれた。

でもこのお薬が私にはあわなかった。
正しく言うと、効きすぎて何もできなくなった。翌日の車の運転も。
学校や病院の送迎があるのにこれじゃ困る。
なんとか薬なしで眠る方法はないだろうか?
もちろん酒に溺れるのもナシで。



いろいろと試し、もっとも自分にあっていたのが寝落ちするまでYoutubeでゲーム実況を見ることだった。


視聴する動画は何でもよいわけではない。

最初は好きなドラマや音楽を視聴していたが、興奮してしまい寝付けなかった。
逆に興味のない分野の動画だと、今度は話がまったく頭に入ってこず、悩みを反芻するループに入ってしまう。
退屈過ぎてもダメなのだ。

おもしろさとつまらなさのちょうど中間。
それが私にとってゲーム実況だった。


何も考えたくない夜。
タブレットを持って布団に入り、知らない人がゲームの世界を冒険するのをただ眺めていた。
コメントも投げ銭もせず、完全な傍観者という距離感がここちよい。


彼らはエリアを探索し、謎を解き、アイテムを拾い、敵と戦い、物語の世界を前進し続けていた。
友情や恋愛を手に入れたり失ったりしながら。
笑ったり泣いたり罵倒したりしながら。

そこには私を悩ませるものは存在しない。


不安にとらわれたとき、私は一日中ゲーム実況を流すようになった。
そのうちにだんだん気持ちが落ち着いてきた。

一種の逃避行動だが、問題に向き合って限界まで痛みを感じ続けると精神や家庭が壊れてしまう。
気をまぎらわしてやり過ごすのも解決法のひとつだろう。


虚構の世界をのぞき見したあと。

現実に戻ればいつでも最愛の息子がそばにいる。
何も失っていない。大丈夫。
大切なものを大切にしながら、私たちは日常というダンジョンを生き抜くんだ。

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津村ねここ
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