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白鳥ねここの人生劇場8話〜小宇宙(コスモ)を感じた日〜

さてさて。

保育系瑠璃色会 年中【きく】組
の幼女白鳥は、
ディスコを感じたり
お友達ができてグルグル回ったり
テツandトモさんになったり

だいたいおんなじ毎日
そいで まあまあそれなりOK
だけど なんとなく
空見上げちゃうんでしょ?

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「ROCKET DIVE」

という日々を送っていたわけですが

#なんのはなしですか
(↓こんな話でしたね)

しばらくすると
幼女白鳥に、様々な異変が
起き始めるのであります。


1982年(昭和57年)某日

近所の田んぼで蛙が鳴き始める頃
全身瑠璃色だった
ナンデドシテ星人a.k.a幼女白鳥は、

ツバの先が少しくるんとして
まきは黒リボンの麦藁帽子
空色の半袖スモック
白色の半ズボン

という姿に変身していた。

無論、"保育系瑠璃色会"の総組員
約300人もみな変身を遂げ、
"保育系空色会"となったのである。

#どうかしているとしか
(やっぱり同化している)

母にそのことを
なんで?と問うたところで、
また"シランキマッテル星人"になるのが
目に見えているし、
吉田先生に問うても
また"テツandトモ"さんに
なってしまうであろう。

空色幼女白鳥は、
なんとなく空を見上げちゃう
のであった。


ああ、そういえば
両親についてだが。
おとうさんもおかあさんも
あたまのビョーキ

であることは理解していた
幼女白鳥であるが、
(↓経緯は3話〜5話)

毎食後と就寝前、
電車のように長く繋がっている
袋をミシン目に沿ってビリリと
1包に切り分け、
その中にある白橙水色など
大小3〜5錠の薬を
両親揃って服用している姿が、
この頃ハッキリと記憶にある。

両親は9時頃就寝するため、
(入院時の生活リズムと同様)
夜8時を過ぎるころ
1階4畳半の和室は布団が敷かれ
おばあの寝室仕様になり、

昼:リビング
夜:おばあの寝室

両親と幼女白鳥は
2階の6畳間に移動する。

父の布団の枕元には丸盆があり、
そこに水が汲まれた
グラス付きのデカンタと
両親の就寝前の薬(眠剤)、
父の水色の煙草(ハイライト)
銀色の円盤様の灰皿とマッチ
が置かれていた。

丸盆の奥には、
小さな白黒テレビが一体型に
なっているラジカセがあり、
しばらく親子3人川の字で
テレビを観たりして過ごし、
眠くなると幼女白鳥は
4畳間へ行き1人で眠るのである。

デカンタほぼコレ
全く同じの見つけた(懐)
メルカリで5000円で売れていた(!)
2階はこの二間、襖で繋がっている。
ステレオやタンス側の壁の向こうは
お隣さんち(長屋です)
2話〜最も古い記憶①〜で登場した
見切れている犬のぬいぐるみ。
この子を横に置き、クタクタになった
"粗品タオル"を握りしめ寝ていた。


6畳間で寝落ちした時も、
朝は4畳間で目を覚ましていた。

それに味を占めた幼女白鳥は
時々6畳間で寝たふりをし、
父に4畳間の布団まで運ばせ
お姫様気分を味わっていたのだが
父よ、気付いていたか?


………



蝉が鳴き始めた頃だろうか。
幼女白鳥の身体に異変が起き始めた。

ある日の夕食後
身体がカアッと熱くなり、
おばあの横に鎮座している
青い羽根の扇風機の真ん前で
風を浴びながらバリバリと
両腕を掻き毟っていた。
そんな幼女白鳥の様子を見ながら

『お父さん、ねここ汗疹かな。』

『なんだろなぁ。明日にでも
"白木さん"とこ連れてったれ。』

両親がそんなような会話をした
翌日、空色白鳥は
自転車に乗れない母と歩いて、
駅前にある白木医院へ向かっていた。

白木医院は、父によく連れて
行かれた駅前のパチンコ屋から
目と鼻の先にあったので、
ナンデドシテ星人は"白木さん"が
"内科・小児科のある病院"
であることは既知であった。

入道雲を眺めながらしばし歩き、
白木医院に到着した。

("おねえさん"と"バイバイの
 おねえちゃん"に今日は
 会えないのかあ〜)

そんなことを思いながら、
待合室で絵本かなにかを
見ていたら名前を呼ばれた。

診察室に入り、白髪混じりで
銀縁眼鏡をかけた先生の前に
母と一緒に座る。

『最近よく掻き毟るんですけど
 汗疹でしょうかねぇ?先生。』

『どれどれ…   うーん…
 これは"アトピー性皮膚炎"
 かもしれんなあ。
 卵や牛乳のアレルギーが
 あるかもしれんねぇ。
 少しそれらを控えて
 しばらく様子見てみたってぇ。
 塗り薬出しとくもんで、
 朝晩1日2回くらい薄く
 伸ばして塗ってもらって。
 今、目安がわかるように
 塗っとこうかかねぇ。』

そう言うと、看護婦さんに
その塗り薬を持ってこさせた。

先生は小さなチューブの蓋を
くるくると回し外すと、
蓋を逆さまにしてチューブの先に
プチッと押し込む。

透明の薬が、
いちご味の歯磨き粉のように
うにょと出てきた。

『ねここちゃん腕伸ばして〜』

言われるまま腕を伸ばすと、
先生は両肘の内側にほんの少しの
薬を乗せ指で塗り広げ、
同じように膝裏にも塗られた。
なんかベトベトする…

『触っちゃあかんよ〜』

触る気満々だった空色白鳥のこと
などお見通しですよ、
と言わんばかりに間髪入れず
先生に言われたので我慢した。

両肘の内側の皮膚は赤味を帯び
数個の発疹から血が滲んでいて、
そこに塗布された透明の薬の膜が
ギラギラと輝いている。

『ほんなら今日は保育園休んで
 家で様子見たってぇ。
 3日くらいしたらまた
 見せにきてぇ。お大事に。』

白木医院をあとにして、
太陽がジリジリと照りつく中
10分ほど歩いて帰宅した。


昼食は何を食べたか覚えてないが
母は父に、ことのあらましを
話しているようだった。

保育園に行けなかった空色白鳥は
敷布団にタオルケットと枕、
犬のぬいぐるみと粗品タオルが
セッティングされた4畳間で
昼寝をするよう母に言い渡され、
襖が静かに閉められた。



父がまだ仕事へ行っていた頃から
設置されいる窓用エアコンが
ヴォーーと鳴り、ひんやりと
心地よい風が空色白鳥を包む。

布団に仰向けになり
細長い部屋の茶色い天井を見つめ
ぼんやりしていると、薬を塗布
した4箇所の周辺だけがぽかぽか
と火照っているのがわかる。


タオルケットをお腹までかけ、
くたくたの粗品タオルを握り
しばらくすると瞼が重くなっきた。




目を閉じてウトウトしはじめると、
4箇所の火照りがじわじわと広がり
お腹の方へ集まってくるのを感じる。

空色の手は火照りの集まる先へと
導かれるように、白い半ズボンの中へと伸びてゆく。




目を閉じたままの視界には、
毛細血管内の赤血球の流れなのか
暗闇に小さな粒の流れが無数に
絡み合い覆いつくしている。





そのうちに小さな光がチカチカと
ランダムに輝き出し、エアコンの
ヴォーーーという音が、
だんだん遠のいてゆく。







…なんか…きもちいー…






導かれた小さな手の指先が
ある"点"に触れたとき、
数え切れないほどの星が輝く
空間の中心に、空色はいた。








両足が伸び身体が硬直してくる。










自分で手を動かしている、
という感覚が徐々に失われていく。









無数の星が輝く空間に1人浮かぶ
空色と、星の空間との境界線が、
どんどん曖昧になってゆく。










星の空間に溶けてゆくほどに
伸びた両足がガクガクと震えてくる。












空間は真っ白になり
今まで感じたことのない
快感の波が全身をめぐった
















……ヴー



……ヴォーーー



エアコンの音が聞こえてきて
瞼を開くと、見慣れた
細長い茶色の天井であった。

もう一度瞼を閉じてみても
数多の輝く星はもう見えない。


ヴォーーーーーーーーー


ふと自分に意識を向けると、
呼吸はハァハァと荒く
額には粒になった汗が張り付き、
お腹までかけていたはずの
タオルケットは
足元で皺をよせて丸まっていた。






君は小宇宙(コスモ)を
感じたことがあるか?

アニメ:聖闘士聖矢より


人生劇場が開幕して4年目終盤

空色白鳥は、はじめて
小宇宙(コスモ)を感じた。

この日以降、空色白鳥には
さらなる異変が起きていくのであった。



それでは今日はこの辺で

ごきげんよ〜

("文章を仕事にするなら、まずはポルノ小説を書きなさい/わかつきひかる著"という本の存在を最近知ったんだけど、
確かにそうかも…と思うくらい
当時の体験を言語化するのに
難儀した〜 でも楽しかった!)

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