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白鳥ねここの人生劇場10話〜さりげなく"小出さん"デビュー〜

さてさて。

"誰が何のために決めた" のか
聞いても誰も教えてくれない
着る服も何かするのも
"みんないっしょ"という
保育園の決まりごとや、
"あたまのビョーキ"の両親の様子
にモヤモヤし、
YOKO FUCHIGAMIになりつつ
人生劇場5年目を迎えた
空色白鳥ですが。

#なんのはなしですか
(↓こんな話でしたね)

"空色"から"瑠璃色"へと再び変身
してからも、両肘内側と両膝裏は
ギラギラ→綺麗→バリバリ→ギラギラ
の無限ループであり、

ギンギラギンにさりげなく
そいつが俺のやり方
ギンギラギンにさりげなく
さりげなく生きるだけさ

ギンギラギンにさりげなく/近藤真彦

と歌うマッチさんではないが、
バリバリパリはさりげなく
(瑠璃色スモックの上から)
そいつが ねここの掻き方
ギンギラギンにさりげなく
さりげなく生きていた。のだが。

それに加え、気づけば
コホンコホンと咳が出始め、
子ども用の甘い咳止めシロップを
飲むも治らず、次第に
ケンッ ケンッ ゼロゼロ
と、妙な咳になってくる始末。

『おい、明日ねここ白木さんとこ
 連れてったれぇ。』

父が母にそう言った翌日、

("おねえさん"と"バイバイの 
 おねえちゃん"にまた会えんがぁ)
と思いながら、
自転車に乗れない母と歩いて
白木医院へ向かっていた。

『ねここちゃん、気管支喘息じゃ
 ないかねぇ。アトピーの子は
 なりやすいようだしなぁ。
 うちでは吸入器ないもんで、
 小出さん行ってみたってぇ。』

銀縁眼鏡白木先生は言う。

瑠璃色白鳥はすじ雲の空を見上げ
ケンッ と時々咳をしながら
見慣れた景色の道を母と歩く。

入園式は手を繋いで歩いた記憶が
あるが、この頃は記憶にない。
もしかしたら繋いでいた
かもしれないけれど。


(お母さんとこの道歩くの
 何回目かな)
などと考えながらしばらく歩くと
『ついたよ』と母。

"小出さん"は、保育園バスルートの途中にあるミント色の喫茶店
"園"の隣、白い四角い建物の
"小出医院"であった。

("小出" こいでって読むのかぁ)

瑠璃色白鳥は母と長椅子に座り、
(おじいちゃんやおばあちゃんが
多いなあ、あの花の絵きれい。
あ、電話ピンクだ。
うちの黒い電話より大きいな。)
と、しばし院内を観察していた。
すると名前を呼ばれたので
診察室へ入る。

銀縁眼鏡白木先生より白髪の多い
黒縁眼鏡の先生だ。

『ねここちゃん、お口開けて〜』

先生が言うので、あーんする。
薄っぺらい鉄の粘土べらみたいな
モノでベロを押さえられた。

押さえられたまま、ンッ ケヘェッ
みたいな咳が出た。

『あぁ、ごめんねぇ
 もう終わったでね。
 じゃ次は胸の音聞かせてぇ。』

瑠璃色スモックと、中に着ている
白い体操服と肌着3枚重ねて持ち
看護婦さんが後ろから捲り上げる

聴診器がピトピトと
胸の数ヶ所に当たる。冷たい。
くるんと椅子が回転し、
背中も同じようにピトピトと
聴診器が当てられた。冷たい。

『んーレントゲン撮ろうか』

黒縁眼鏡先生が言う。

"レントゲン室"に行き上半身裸
になった肌色幼女白鳥は、
看護婦さんが黒いぶ厚い板を
セットした場所に立たされる。
顔の前に台が降りてきた。

『板にお胸しっかりくっつけて
 顎をここに乗せてね。
 おててはここ掴んでね〜』

「はーい。(板、冷たっ。
 何されとるのこれ。)」

『じゃあそのまま動かないで
 ちょっと待っとってねぇ。』

十字状態の肌色幼女白鳥を置いて
看護婦さんは出て行った。

(えぇ⁈何されとるのこれ。)

"ねここちゃーん、今から
 息吸って〜って言うから
 そしたらいっぱい息吸って
 そのまま止めとってね。
 いくよー
 息吸って吸って〜〜止めて!"

スピーカーから看護婦さんの声。
言われた通り思い切り息を吸い
出そうになる咳を必死で止めた。

ピカッ ガシャン

"はーいおわり!息していいよ〜"
すぐに看護婦さんが戻って来た。

『ねここちゃん"しっかりしてて"
 えらいね〜。服着ていいよ。』

この前の誕生日のとき
おばあからも
"しっかりしとる"なぁ言われて
看護婦さんにも
"しっかりしてて"言われた。 
"しっかりしとる"て何だ?

肌色から瑠璃色になりながら、
そんなことを思った。

しばらく母と待合室で待ち、
再び黒縁眼鏡先生に呼ばれた。

先生の机の前の壁にある
白い箱が光って明るくなる。
ペラペラのフィルムを箱の上部に
ピッと挟むと、そこに
"ホネホネロック"が現れた。

(へー!"レントゲン"は身体の中
 をうつすんだ。すご。)

※"レントゲン撮影"について
 白鳥の中でこの時のものが
 最も古い記憶なので、
 初であったかどうかは謎である

『うーん、やっぱりちょっと
 気管支が炎症しとるかな。
 お母さん、ねここちゃんは
 注射と吸入大丈夫そうかな?』

『はい。注射で泣いたことない子
 なんで大丈夫だと思います。』

『吸入は今やっとる患者さん
 おるもんで、ほんじゃあ先に
 注射しとこうか。』

そんな会話を聞きながら、
瑠璃色白鳥は
(自分は注射したことあるのか)
と思っていた。

黒縁眼鏡先生の後ろに見えていた
水色パーティションの奥へ
かわいい看護婦さんと共にゆく。

くるくる回る丸い椅子に座ると、
左腕のスモックを肩の方まで
かわいい看護婦さんに捲られた。

『お注射の用意するから
 ちょっと待っててね〜』

はーいと返事をし、
(さっきの自分のレントゲン
 写真がいっぱい並んどる
 "ホネホネロック"だったら
 ………    あはは)
と、くだらない妄想をしながら
しばし待つ。


……



デカ!!!


かわいい看護婦さんが
手にしている注射器を見て、
瑠璃色白鳥は一瞬怯んだ。

自分の顔と同じくらい
大きく太い注射器なのだ。

『ねここちゃん、ゆっくりお薬入れるけど痛かったら言ってね。』

なにかで拭かれた腕がスーとする

「はーい。(ドキドキ)」

チクリ

(お?全然痛くない。)

痛くないとわかると、
自然に左腕を見ていた。

刺さっとる。確かに長い針が
瑠璃色白鳥の腕に刺さっている。
針の先から入ったお薬は
いったい何処へ行くんだろう。

マジマジと見ていたら、

『ねここちゃん強いね〜!』

と、親指をゆっくり押しながら
かわいい看護婦さんは言う。

「だって痛くないもん!」

『そっかあ、ありがとう!』

にこにこもっとかわいくなった
看護婦さんを見て、
瑠璃色白鳥はなんか嬉しかった。

結構な時間をかけて注射終了。
ずっと痛くなかった。
痛い子もいるんだろうな、
"白木さん"で小さい注射器でも
泣いてる子見たことあるし。

『ねここちゃん、じっとしてて
 くれてありがとね〜』

かわいい看護婦さんに言われ、

「全然痛くなかったからだよ〜
 ありがとうございました!」

自然に口から出た。

『あはは ありがと!
 ほんとねここちゃんは
 "しっかりしてる"ね〜!』

まただ。
また"しっかりしてる"言われた。
なんだ?何なんだ?
(しっかりしとるってなにぃ?)
かわいい看護婦さんに
聞いてみたかったが、
お仕事の邪魔をしちゃダメだよな
と思い、聞けなかった。

『吸入空いたから、
 ねここちゃんこっちおいで〜』

かわいい看護婦さんについて行き
大きな機械の前に座る。

機械から伸びているホースを
看護婦さんが手に取り、
ホースの先にアヒルの口
みたいなものをはめた。
ポチっとスイッチを入れると、
アヒルの口からブワ〜ッと
勢いよく煙みたいなのが出た!

「わあ!この煙なに〜ぃ?」

心の声がまんま口から出ていた。

『あはは ビックリした?
 これはね〜ねここちゃんの咳を 
 ラクにするお薬なんだよ〜』

「へ〜!こんな煙みたいな
 お薬もあるんだあ。」

『じゃあここをお口でくわえて
 しばらくお薬吸ってね〜』

はーいと返事をし、
アヒルの口をくわえ煙を吸った。

時々 ケンッ と咳をしながらも
タイマーが鳴り無事終了。

『ねここちゃん、今日は色々
 長い時間えらかったでしょ〜
 でもこれで終わりだで、
 今日は保育園お休みして
 ゆっくり休んどいてなぁ。』

黒縁眼鏡先生が来て言った。
※この"えらかったでしょ〜"は
 名古屋弁であり、標準語だと
 "疲れたでしょ〜"になります。

はーいと返事をし、先生と
看護婦さんたちにバイバイをして
母と歩いて帰宅した。

人生劇場5年目の秋

舞台セットは"小出医院"
肌色でレントゲンを撮り
ホネホネロックが流れ
左腕のデカ注射を眺め〆は吸入

舞台上に白いスモークが漂う。


    \ピシッ/

バリバリパリバリバリパリ      

ケンッ ケンッ


   \ピキンッ/

…?  なにぃ だれぇ?


それでは今日はこの辺で

ごきげんよ〜

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