趣味がなくなるとき
昔は自分に趣味がなくなるなんてことは思いもしなかった。文章を描くのが好きで、小学生の頃は推理小説モドキを書いてみたり、中学生の頃は架空の歴史小説を書いてみたり、高校・大学生の頃はSFやホラーを書いてみたりした。
社会人になってから、突然漫画を描きたいと思い始めた。絵心も知識も経験も無いが、衝動に任せて漫画のような何かを描いた。
小説にしても漫画にしても、誰に評価されることはなくとも、私は満足だった。それはそれらの創作が、私にとっての趣味だったからだ。ただ書く・描く時間が楽しかった。
それが今は、何も楽しくない。ある時期から急に、私は趣味に時間を費やすのが億劫になった。まさか自分が無趣味の人になるとは思ってもみなかった。かつて私は、生意気にも趣味がないなんてつまらない人間だと思っていた。まぁ、実際今私はつまらない人間になっているので、その考えは合ってるのかも知れない。
つまらないが、別に不幸なわけではない。家族やペットに囲まれて、うまい飯を食べ、温かい風呂に入り、寝る。そういう時には幸福を感じる。だが、寝るのや食う時間も惜しんで創作していた頃に比べると、やはりつまらないのだ。
いつかまた、他のものを投げうってまで没頭できる趣味を始められる時が来るのだろうか。何となくだが、もう二度と来ない気がする。そう考えると、書くことや描くことが何よりも優先できた日々が、とても懐かしく、妬ましく、忌々しく、眩しく思えるのだ。