極東から極西へ17:カミーノ編day14(Burgos〜Hornillos del Camino)
前回のお話。
ブルゴスで観光と、初のスーパーマーケット体験。
前回
今回のお話
お弁当と、ミュージックアワー!
そして知らぬ間に事件が起きていた。
・Burgos〜Tardajos
暗い中、ブルゴスのアルベルゲをスタートする。ブエンカミーノのアプリの通りに道を進んだ。
所が旧市街の終わりと思われるところで、道が分からなくなる。先行していた何人かは真っ直ぐ進んだみたいだけど?
じゃあ真っ直ぐ……と進みかけると、チッチッチ、と頭上から音がする。何ごと? どこから? と真っ暗な中上を見ると、建物の窓から街の人。
「カミーノはあっちだよ!」
と、小声で教えてくれた。
更に間違えて「違うよ、あっちだよ!」うろちょろうろちょろ。あ、この道か! 手を思い切り振って感謝の意を伝えた。
もう本当にお世話になりました(ついここだけ丁寧語)。
タルダホス手前でリッカさんとカリフォルニアの男性が一緒に歩いているのが見えた。フランチェスコさんはいない。
「やあ、ツネくんまた会ったね。こちらはツネくんだよ、リッカ」
「いや、僕らは会ってるよ。前の、前の、前のアルベルゲだったかな? なあ、ツネ」
そう。私達はそれぞれ会っているけれど、三人揃ったのは今回初だ。
「小さな世界だね」
カリフォルニアの男性がうん、と頷いた。
リッカさん達は朝ごはんをタルダホスで食べると言う。私はトイレをカフェで借りて、コーヒーだけ頼んで外で飲んだ。
その後、少し離れた木陰のベンチで、昨日の残りの生ハムをパンに挟んでお弁当として食べた。残りを全部挟んだので贅沢な朝ごはんになった。
そう言えば、昨夜ビンセントさんが、筋肉になるから生ハムは自分で食べなさいと言っていたんだった。
・Tardajos〜Hornillos del Camino
オルニジョスの街に着くまでに日が昇り、じわじわ肌を焼く。何回か日焼け止めを塗り直しながら道を歩く。早速帽子が役に立っていた。
スマホが震えた気がしてポケットから拾いあげると、Sさんからだった。話したいことがあるから、アルベルゲに着いたら連絡が欲しいと言う。時刻は11時半過ぎ。ブルゴスでは先に行って欲しいと言われたけれど、何かあったのか?
慌てて通話すると、どうしても外せない事情で先に帰る事にしたとのこと。スーツケースの引き換え券の写真を送って欲しいと言われた。
「え、今どこ?」
「ビジャフランカです」
ビジャフランカ? それ、泊まった場所から動いてないよね?
「これからブルゴスに向かって、ブルゴスからサンティアゴに行きます」
「チケット、取れたの?」
いや、チケットだけでなく、現地のホテルやサンティアゴからバルセロナに向かう手段は調べているのか?
「はい、取れましたー」
「なら、いいけど。引き換え券着いたら探してみるね?」
「お願いします!」
「スーツケースはどっかのホテルにあるはずだから、心配ならインフォメーションできいて? 翻訳ソフト使ってね!」
そんなことを伝える内にオルニジョスに到着した。
最初と、次の宿は予約で一杯。
あれ? と焦る。まだ12時だ。早く着いて引き換え券を探さなくてはいけないのに、宿がない。ここは小さな村なので、もし全部埋まってしまっていたら5km先の一軒か更に先に探しに行かなくてはならない。
なんとか三つ目の宿にチェックイン……したのだが、痛恨。ベッドを間違った。ごめんなさいと言ったけれど、若いオスピタレラの眼光は鋭かった……。
正しいベッドに辿り着き、下の段のネザーランドのマリンカに挨拶をした。初めて日本人に会ったと言われた。やっぱり少数派なんだなあ。
気を取り直し、すぐに引き換え券を探したけれど、無い。幸い番号は控えていたから、Sさんに伝えた。
「ブルゴスからのバス、遅れてるみたいで22時着が23時になりそうです」
「ちょ、宿は? アルベルゲは22時に閉まっちゃうから仮にあっても使えないよ?」
「酔いそうなんで、現地で探します」
現地?
現地……つまりサンティアゴ・デ・コンポステーラは、巡礼者を迎える家族や、ゴールから100km遠い(完走証明のコンポステーラがもらえるギリギリの距離)サリアで増えた巡礼者も加わり混んでいるのでは? 何故予約しない?
そしてこの日、Sさんからの連絡は途絶えたのだった。
「………不審者として捕まらないか? 大丈夫か?」
沈黙したスマホに話しかけてもどうしようもない。ブルゴスで会えていたらマシな方法を2人で考えられたのに。
元の職場でSさんの連絡先を知っている人にそっと現状を伝えて、私はカリマさんから連絡が来たので彼女のアルベルゲに遊びに行く事にした。
・ミュージックアワー!
カリマさんと食べ物をシェアしてご飯を食べている最中、ポスターを見つけた。今日の19時半からジャズや歌の会がバーで開かれるらしい。セバスチャンという男の子が、ビーガンメニューもあると言っていた。
ビーガンメニューは、アレルギーの多い私に取って安全な食事形態の一つだけれど、念の為薬を飲んで行くことにする。
「行ってみようかしら!」
「楽しそうだよね」
そんなわけで、19時半に合わせて村外れのバーに行くことにした。
この昼食シェアの時にカリマさんに、私はそんなにアルコール分解酵素が無いからお酒が飲めないと言う旨を伝えられた。
「妹達と、両親は飲めるんだけどね!」
「まあ、不思議ね!」
というか親戚中強くは無いが飲めるのだ。げっこげこの下戸は、私だけ。
前にアルベルゲで一緒だった日本人の男の子と、セバスチャンと一緒のテーブルだ。後からカリマさんもやってきた。
二人の歌手は有名どころの曲や歌(ジプシーキングスのボラーレなんか、好きな歌だった)を沢山披露してくれた。皆んなが盛り上がる中、カマレラは一人で、くるくる働いていた。
私も知っている歌は一緒に歌ってみたり、手拍子を叩いてみたり、かなり楽しい晩餐会だったけれど、セバスチャンにはうるさかったようだ。
メインを食べ終わったら疲れたから先に寝るね、と帰ってしまった。
最後に、フランク・シナトラの「My way」を歌ってくれた。多分カミーノ(道)だからだよね?
会計の時に、「ご飯と歌をありがとう!」とスペイン語でカマレラに言ったら、笑顔で握手してくれた。「良ければ、Rateしてくれる?」と言われたので、後でレストランのレビューを入れておこうと思う。
ベッドに戻っても、Sさんからの連絡は無かった。時間を見ると、まだ21時半。サンティアゴ・デ・コンポステーラに着いてもいない。
気にしすぎても仕方ない。お互い良い大人なのだ。自分の身は自分でなんとかしてもらうしかない。
明日も起床時間は早い予定だから、寝なくては。
横になってすぐに眠りに落ちた。
次の話