そして、アルマニャックはどこへ……。
『王妃マルゴ』の最終回については、ひとつもの足りなかったことがある。
それは、アルマニャックはどこに行ってしまったのかということだ。
アルマニャックーーナヴァルの家臣にしてそばかす顔の細身の男
ーーおそらく年頃同じぐらいで、王子の遊び相手としていっしょに育ち、
ナヴァルが王となってからも、忠実な家臣として仕えてきた(……と想定)が、
その彼が最終回ではどこのコマにも登場していない。
出てくるのは、途中からやけにひんぱんに登場するようになったモルネーとかいう髪のうねうねした家来ばっかり
(いや、アルマニャックの髪も最初から不自然にうねっていたが)。
萩尾望都はアルマニャックをどこへやってしまったのだろうか?
常にナヴァルのアンリにつき従って出てくる、控えめないい脇役だったのに。
しかもこの人、その顔立ちからして、明らかにミロンの一族郎党(※注)。
作者にとってはいわゆる安定パイ。その彼を最終回に登場させないとは~!
最初に、アルマニャックが物語の中に登場した時には、そのお酒と同じ名前からなにかと思ったが、
この人も史実の人物のようで、実際にどういう人柄だったかはともかくとして、
萩尾望都の『王妃マルゴ』の中ではなかなかの忠臣として描かれていた。
そういう人には読んでいるほうもつい安心してしまうし、なじんでしまう。
だけど、最後に出てきたのは最終回の一話前の一コマだけ
(「陛下! 狩りに行きましょう!」)。
マルゴの愛人のシャンヴァロンは、最終回にも老け切った姿をさらしてちゃんと登場したというのに……。
この後出る予定のコミックスの最終巻では、
6巻でやったような「あの人のその後」みたいなおまけまんがで登場させてくれるのだろうか?
でも、そんなことをするよりも(するのかもわからないし)、
やっぱり、最終回には忘れずに出しておいてもらいたかった!
※注
ミロンの一族郎党
作品は違えど(そして、登場人物としてまったく違っても)、
みな同じように目が線だけで描かれる、同じ顔立ちの、作者いわくのタレ目一族
(『メッシュ』のミロンのほか、『スター・レッド』の黒羽や、『11人いる!』のアマゾンなど)。
出典:『名前というもののあれこれ』萩尾望都・著(『思い出を切りぬくとき』所収)。
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『王妃マルゴ』萩尾望都・著(2012~2019・実発表年として)
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※図版写真は筆者撮影。
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