ニコラ・ド・ランジリエール / 手からあふれる個性
久しぶりに作品の紹介をしたいと思う。
比較的、近現代の作品ばかりを紹介してきたが、今回はロココ絵画からである。
Study for hands (1715)
タイトルのStudy forは、美術作品では「習作」つまりは練習のために作られた作品である。なので、この作品は「手を練習ふるために作った作品」ということである。
赤い花を取り囲むように老若男女の手が立体的に描かれ、習作といえどらかなり存在感のある一枚であった。
白く美しい手、ぷっくりとした手、何かを持った手...どんな人の手なのか、想像を掻き立てられる。
加えて、大胆な構図のせいか、今にも我慢から出てくるような、ちょっとグロテスクなものまでも感じる。
作者のニコラ・ド・ランジリエールは、ルイ14、15世の時代の肖像画家である。
パリに生まれたが、父親の仕事に伴ってアントワープに移り、その後はロンドンに移動して、肖像画でのピーター・レリーのもとで学んだ。
フランスに戻ってからは、美術評論家のシャルル・ブランに認められ、アカデミーに入会、売れっ子肖像画家としての人生を歩む。
調べておもしろかったのは、ランジリエールの作品に描かれるのは、ブルジョワ階級の人ばかりで、報酬が高かったからと予想されているそうだ。
私はあまり肖像画の良し悪しがわからない。
似ている・似ていない、内面を表している...などあるのだろうが、いかんせん描かれる人は描かれることを意識してポーズをとり、描く方も(おそらく)似せつつも欠点は隠して、本人の素晴らしさを表現している...あたりから、どうも記号的に感じてしまう。(観察していくと面白いらしいが、私はその域には達していない)
だが、「手」のみになったとき、反対に想像力が働き、上述したような迫力や気持ち悪さ、見入ってしまう魅力を感じた。
肖像画でない作品を自由に描かせたとしたら、この肖像画家は何を描くのだろうか。
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