「トキソプラズマ」は本当に猫や人を操るのか?
トキソプラズマは、本当に猫と人を操っているのでは?
それでも猫好きには猫との生活が幸せ。
猫の糞便の取り扱いに気をつけよう。
AIMタンパクの機能不全もトキソプラズマが原因では?
そろそろ次は人間の腎臓の話をします。
前に予告したトキソプラズマのお話をします。
トキソプラズマは、猫に終宿主(繁殖を行う最終宿主)として寄生する寄生虫で、それ以外にもネズミや人やいろいろな動物に寄生します。
猫に感染したトキソプラズマは、まず猫の腸で繁殖します。
主に初感染の時は環境に強く感染力の強い休眠状態のオーシストを排出します。
オーシストの排出とは別に腸で増殖したトキソプラズマは免疫反応の初期に働く白血球であるマクロファージや樹状細胞などに感染し増殖します。
それは、白血球がトキソプラズマを異物と認識して攻撃することを避け、自分に対する免疫反応を回避するためです。
さらにはその感染した白血球を移動手段として利用して血流に乗って中枢神経(脳)に移動します。
脳には脳脊髄関門という脳に細菌や 有害物質を近づけないためのシステムがあるのですが 、自分を攻撃しなくなった白血球を使い脳脊髄関門をすり抜けて脳に到達します。
これはトロイの木馬戦略と呼ばれています。
その後にトキソプラズマは脳で慢性的な持続感染を引き起こし、その宿主の行動や心理に自分の生存や拡散に有利な影響を与えます。
先ず猫では鼠(ネズミなど)の捕食行動が活発化します。
鼠などの中間宿主では、リスクを取り猫や他の動物などに恐怖を抱かず近づくような行動を促します。
ネズミでさえも猫への恐怖心を失い、捕食者である猫に捕まりやすくなり、トキソプラズマの拡散を助けています。
人も以前は猫科動物(トラやライオンなど)の捕食動物だったのですが、猫への接触を好むようになりトキソプラズマの拡散を助けます。
ただ、忘れてはいけないのは先天性トキソプラズマ症候群です。
これは学生の時にも習ったことを覚えています。
トキソプラズマは、感染した母親から胎盤を通して胎児に感染します。
症状は、脳の発達障害、てんかん、小頭症、視力聴力障害などがあります。
妊娠初期ほど症状がでやすくなります。
これは胎児の免疫が未完成な間に感染すると重症化するのだと考えられます。
大人でも免疫の低下状況では重症化することがあります。
例えば免疫抑制剤を使用している人やがんやエイズの人などです。
ではどうすればいいの?ということですが、以下のようなことだと考えます。
一般の人ももちろんですが、特に妊娠初期の妊婦さんには大切なことだと考えます。
猫の糞便の管理。
猫のトイレを定期的に掃除し、特に妊婦さんは猫の糞便に触れないようにすることが重要です。
手袋をするのも良いと思います。
医療現場でも感染の可能性が高いと思ったら手袋をします。
手袋には効果的な付け方と外し方がありますが、これはまた必要であれば記事にします。
手洗いの徹底。
特に猫のトイレを扱った後は手をよく洗うことが重要です。
医療現場で言う一処置一手洗いです。
肉の食べ方。
肉は十分に加熱してから食べることが重要で、生肉はリスクが上昇します。
生野菜や果物の洗浄。
生で食べる野菜や果物はよく洗って食べることが重要です。
土壌などにもオーシストは存在します。
さらに妊娠を計画している女性はトキソプラズマに感染していないか検査を受けた方が良いと思います。
さらに再度仮説として考えついたこともあります。
この前から話題にしている「AIMタンパクの機能不全」もトキソプラズマが誘導した可能性があるのではと考えています。
その理由は以下の通りです。
トキソプラズマが感染するマクロファージなどはAIMタンパクと密接に関連し、初期の免疫反応を担っていること。
猫科動物のAIMタンパク機能不全は猫科動物にとっては不利だが トキソプラズマには有利だと考えられる。
トキソプラズマが宿主の免疫を乗っ取るシステムのすごさを考えると、AIMタンパクの機能不全がその内の一つあっても不思議ではないのではと考えます。
野生のネコ科の動物におけるトキソプラズマの生涯感染率については非常に高く、100%に近いという推測もあります。
この生涯感染率の高さを考えると、自分が進化して相手を利用すること以外にも、相手のシステムを変えることがあっても不思議ではない気がします。
それでも猫好き にとっては猫との生活はかけがえのない幸せです。
妊婦さんとその子どもを守り、自分を守り、社会を守る。
そして猫と幸せに暮らす。
この考え方が大切だと考えます。
注意すべきは注意するとして、猫と仲良く暮らすのが猫好きの幸せだと思います。
私も小悪魔のような我が家のシロと仲良く暮らしたいと思います。
そろそろ次は人間の腎臓の話をしたいと思います。