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〔ショートショート〕時代を超えた宴

部屋を見渡して、圭子は激しく後悔した。ハロウィンなんだから、普通の仮装とは違うのに。魔女とかゾンビとか、それらしい格好はいくらでもあった。何で六条御息所なんて選んじゃったんだろう。
夕子から大学のハロウィンパーティに誘われ、浮かれすぎたのだ。高校まで真面目だった圭子は、仮装もパーティも初めてで、舞い上がっていた。西洋のモンスターの中に着物姿、明らかに浮いている。と、魔女に扮した夕子が圭子を見付け駆け寄ってきた。
「素敵!私もそうすれば良かった!」
「え?何で?」
「だって見てよ!ここ、魔女だらけじゃん。目立たないよ、これじゃ」
確かに圭子は目立っていた。
「でも一人だと淋しいか」
夕子は急に大声を上げる。
「この中にお殿様はいらっしゃいますかー!」
人混みの中から、奇跡的に織田信長の格好をした男性が出てきた。
「時代を超えて宴を楽しむが良い!」
夕子がスティックを振りながら唱え、信長と六条御息所が並ぶと、大きな拍手と歓声が上がった。
(完・410字)


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