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〔ショートショート〕逃亡

奴らの包囲網をかいくぐり、俺は小さなボートで島を離れた。夜明けまでにどこかの無人島まで逃げたい。俺は一心不乱にボートをこいだ。
東の空が明るくなる頃、前方に島が。軋む腕に鞭打って、俺は漕ぐスピードを上げる。やがて島に到着し、俺はボートを下り砂浜に倒れ込んだ。助かった!
「マダ早イヨ」
突然、耳元で声がして跳び起きる。見ると、死神のような鎌を持ったロボットが、袋を2つ並べて俺を見ていた。
「大キナ福袋ト小サナ福袋、ドチラガ良イ?」
福袋?どちらを選んでもきっと、中身は「福」ではなく「不幸」だろう。
「大きい方で」
仕方なく選び袋を開けると、黒い座椅子が出てきた。
「幸運ヲ」
そう言い残しロボットは雑木林に消えた。

人類はロボットとの戦争に負けた。生き残った俺たちは監獄島に送られ、そこの奴隷生活から何とか逃げ出したのに、奴らは全て計算済み。弄ばれただけだと俺は悟り、柔らかな座椅子に座った。
やがて座椅子は爆発し、俺の逃亡劇は終わった。
(完・410字)



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