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〔ショートショート〕台にアニバーサリー2(助手編)
物にも記憶がある。僕が助手を務める博士は、物に刻まれた残留思念を映像化する装置を完成させた。だが実験は中断されたー僕のせいで。
僕が拾った欠片で装置のテストをすると、何とそれは断頭台の欠片だった。その映像にショックを受けた博士は、黙って装置をしまい込んでしまった。ここは僕が何とかしなければ!
「あの…博士」
「何だい?」
博士は背中を向けたまま応える。
「あの装置を使いたいのですが…」
一瞬固まった後、博士はこちらに向き直った。
「もうあの装置は使わない。そう言ったよね?」
「はい…ですが最後にもう一度だけ。どうかお願いします!」
博士が根負けしたので、僕は1本の古いボールペン芯を台に置く。映像が映し出されると、すぐに博士が息を飲むのが分かった。
女性がプレゼントされたボールペンを嬉しそうに見つめている。贈り主は博士。女性は博士の元恋人、かつ元共同研究者だ。
「何度も芯を取り替えて、今も使っているそうです。最初に入っていた芯は、大切に保管されていました」
「…そうか」
彼女を探し当て話を聞いた。二人は別れたが、それぞれ違う場所で研究を続けていた。
彼女の研究は、欠片などの残留思念を使って、壊れる前の形を復元すること。実はこの芯も、一度は折って捨て、でもすぐに拾い出し保管していたそうだ。そして完成した装置を使い、一番に復元した。
彼女から昔貰ったマフラーの実験で、博士が密かに涙を拭ったことに僕は気付いていた。もう一度、この装置の素晴らしさを思い出してくれたら…。僕は祈るような気持ちで博士を見つめている。
(完)
こんにちは。先の作品があまりにブラックだったので、ZEROさんの助言から続編を書いてみました。ZEROさん、有難うございます!おかげさまで、ちょっと罪悪感が薄れました😅
ショートショートと言うには長いかも知れませんが、続編なので、こちらも貼っておきます。
改めて、たらはさん2周年おめでとうございます🎉🎉🎉
前回で見捨てずに、また読んで下さった方、本当に有難うございました🍀