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〔ショートショート〕風を治すクスリ

「俺さ、風を治すクスリが欲しい」
ここはT高校発明部。自称エースの勝浦が、部室に入るなり言う。
「何だよ、風邪気味なら早く帰れよ」
先に来ていた部長の吉野が言い、新入部員の後輩女子、祖谷も心配そうだ。
「いや、その風邪じゃなくて、ウィンドの方」
「え?吹く方のですか?」
祖谷が勝浦に聞く。
「そう。俺んち、和菓子屋じゃん」
「うん」と吉野。
「そうなんですか?」と祖谷。
「あ、祖谷さんは初耳か。俺んち和菓子屋で、店先に幟を立ててるんだよ。『ういろう羊羹抹茶味』とか、イチオシ商品の」
吉野と祖谷が頷く。
「でも風が回る場所でさ、幟がポールに巻き付いて商品名が読めないんだ。だから風の吹き方を治すクスリを……」
「なあ」
「あの」
吉野と祖谷が同時に口を開く。吉野は祖谷に続きを譲った。
「風を治すより、幟に工夫した方が早いかと……」
「だな」
勝浦は一瞬キョトンとしたが、パッと明るい顔に。
「そうか!そうだな!」
つい吉野と祖谷も笑ってしまう。今日も発明部は平和だ。
(完・416字)


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