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〔ショートショート〕月夜の寝癖

会社で憧れている香月さんに、初めて誘われた。「満月を一緒に見ない?」って。今日は休日、朝から美容院に行き、メイクも洋服もバッチリだったのに!何で夕方から、変な寝癖みたいに髪が跳ねるの?思い切り濡らしても、ドライヤーやアイロンで頑張っても、5分もすればまたピョンとなる。私は泣きたい気分でニット帽をかぶり、洋服もそれに合うように着替えるしかなかった。

待ち合わせ場所に走ると、手を振る香月さん。あれ?香月さんもニット帽!
「月野さん、ありがとう!来てくれるかなって、実はドキドキだったんだ」
「えっ私こそ!今朝からずっと緊張して」
「ほんとに?」
嬉しそうに笑う彼と、彼の友人が持つ小さなビルへ。この辺りで一番月が綺麗に見える、秘密の場所らしい。
鍵を開け屋上に出ると、驚くほど満月が近い。香月さんがニット帽を脱ぐと、彼の髪の寝癖が跳ねた。優しく彼が言う。
「僕ら月の民は、満月の夜にアンテナが立って、月のエネルギーを受け取るんだよ。月野さん、君もね」
「え?」
恐る恐る帽子を脱ぐ私。ピョンと跳ねた寝癖の先が、キラリと光った。
(完・454字)


こんにちは。文字数オーバーですが(またかよ!)、こちらに参加させていただきます。410字の壁は、なかなか厳しい💦100字以上削ったのですが、まだまだ……😓

たらはさん、またお手数かけますが、よろしくお願いいたします。
読んでくださった方、ありがとうございました。

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