〔ショートショート〕忘年怪異
今夜はサークルの忘年会。上機嫌で店を出た後、享が、
「今から肝試しに行こうぜ!」
と言いだした。この近くに有名な廃旅館があるらしい。いつもなら断るのだが、今日は気分が良くノリで賛成してしまう。
けれど大半のメンバーは「寒いから」「怖いよ」と、二件目に向かったり、帰宅したり。結局は俺、享、涼の男三人で向かった。
15分ほど歩いた後。
「着いたぞ」
享の示す方に顔を向けると、お化け屋敷そのものの廃旅館。俺たちは内心ビビリながらも、スマホのライトを頼りに開いている窓から侵入した。
中は真っ暗で不気味ではあるが、特に怖いこともなく、スプレーの落書きばかりが目に付く。3階まで見て回り、そろそろ帰ることに。が、
「あれ?ここの階段は?」
何故か降りる階段が見付からず、同じところをグルグル回るうちにパニックになってきた。その時、
「落ち着いて」
声に振り返ると、若い女がいた。
「だ、誰だよお前!」
女は呆れたように溜息をつく。
「誰って、ここへ案内したの私でしょ」
え……?俺は記憶を辿ろうとするが、何故かぼんやりと霧がかかったようでハッキリしない。
「あれ?そう……だったかな……」
涼も曖昧に応える。
「もう!しっかりしてよ、二人とも!」
そうか、彼女の案内で俺と涼はここに来たのか。でももうひとり、誰かいたような……。
「階段はこっち。行くよ」
彼女の声に、俺と涼は慌てて着いていく。とにかく今は、彼女に着いていこう。考えるのは後でいい……よな?
(完・604字)
こんばんは。大幅に文字数をオーバーしてしまいましたが、こちらに参加させていただきます。
頑張って削ったのですが、これが私の限界でした💦
たらはさん、お手数かけますがよろしくお願いします。
読んでくださった方、ありがとうございました。