〔ショートショート〕遠距離恋愛販売中
またLINEだ。付き合って3か月、俺は清美にウンザリしていた。束縛と嫉妬が激しすぎる。
「遠距離になったら楽かな。そのまま自然消滅も……ん?」
いつの間にか迷い込んだ路地裏で、小さな看板を見付けた。
「遠距離恋愛販売中」
俺がその店にふらりと入ると、予想外に若い男性店主が出迎える。
「ようこそ。遠距離恋愛ですね?お相手は今の方で?」
「は、はあ……」
いきなりの問いに気圧され、曖昧に頷く。
「ではこの青いカードにサインを。そのカードを持ち歩けば彼女と会うことはないので、会いたくなればカードをどこかにしまって下さい。不要になれば処分を」
俺は言われるまま料金を払い店を出る。騙された、と思いながら。
だがその日以来、本当に清美と会うことは無くなった。何故か外出や出張ですれ違いが重なるのだ。最初の内は鬼のように来ていたLINEも、段々と減っていった。俺にはこのぐらいの距離感がちょうど良い。
数か月経った。俺はカードを机にしまって、久し振りのデートに。だが、待ち合わせ場所には彼女と知らない男がいた。
「私、淋しくて。彼と付き合うことにしたの」
予想できた結末だ。なのに、秋風の冷たさが身に染みた。
(完・489字)
大幅に字数をオーバーしてしまいましたが、こちらに参加させてください。これ以上、私には削れませんでした……
たらはさん、お手数かけますが宜しくお願いいたします。
読んで下さった方、ありがとうございました。