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〔雑記帳〕秋には本格ミステリを

秋と本格ミステリは相性が良い。うだるような暑さから解放され、思考力、集中力、忍耐力が戻ってくる季節だから。実現不可能な密室トリックなどに頼らず、気持ち良く読者を導き、騙し、散々迷路の中で迷わせておいて、最後には出口を示して光の中へ救い出してくれる。これが本格ミステリだと思っているので、気力や体力が足りない夏は心ゆくまで迷路で彷徨うことが難しいのだ。

そんな私にとって、本格ミステリと言えば「アガサ・クリスティ」。ポアロ、マープル、ハーリ・クィン、トミーとタペンス。これらのシリーズは、間違いなく一度は読んでいる。内容まで全て覚えているかどうかは別として、だが。もちろん、これらのシリーズでも、それ以外でも、「アクロイド殺し」「ABC殺人事件」「オリエント急行殺人事件」「象は忘れない」「鏡は横にひび割れて」「復讐の女神」「そして誰もいなくなった」「検察側の証人」「ねずみとり」……など、覚えている物も多いが、綺麗さっぱり忘れてしまっている物もある。仕方がない、私の記憶力はこんなものだ。また読み返して楽しめると思えば、それも悪くない。

本国のイギリスでは、「クリスマスにはクリスティを」というキャッチフレーズで、出版社が売り出していたこともあったそうだ。私も「ポアロのクリスマス」などクリスマス前に読み返したくなる物もあるので、この出版社の作戦は成功したのだろう。それでも作品全体を考えると、やはり秋の夜長に読みたいと思うものが多い。登場人物の言葉の裏を読み、行動の背景を探り、見えなかった真実が段々と浮かび上がってくる。そのゾクゾクする過程を心ゆくまで楽しむのは、やはり秋の夜が似合うと思うのだ。

ついでに私の読書歴を書いておくと、高校から大学にかけては、クリスティの他にエラリー・クイーンの悲劇シリーズや、チェスタートンのブラウン神父シリーズ、ガストン・ルルーの「黄色い部屋の秘密」、ヴァン・ダインの「グリーン家殺人事件」など、名作と言われる物を読みあさった。その後、綾辻行人氏の「十角館の殺人」に震え、有栖川有栖氏の「月光ゲーム」に痺れ、京極夏彦氏の「姑獲鳥の夏」に溜息をつき、法月倫太郎氏や二階堂黎人氏へと手を伸ばしながら、宮部みゆき氏や東野圭吾氏にのめり込み……という、本格ミステリを中心としながらも違うタイプのミステリも楽しんできた。とにかく面白いと思うものに飛び付いた結果だが、やはり今でも一番心が震えるのは「本格ミステリ」だ。

元・活字中毒を自認する私は、これら以外のもっと軽いミステリも、ホラーもショートショートも、冒険物や童話も好きで、それなりの数は読んでいる。それでも、秋はやっぱり本格ミステリを読みたい。この記事を書き終わったら、久し振りに、買っただけで読みそびれていた有栖川有栖氏を読もう。「日本扇の謎」、どんなストーリーか今からワクワクしている。
さあ頑張れ!私の100均の老眼鏡。


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