見出し画像

〔雑記帳〕だから、誰だよ!

以前、「怖いかも知れない話3」で書いたが、私は古い和室を寝室として使っている。ずいぶん前に、簡単な引っかけるだけの鍵を付けたところ、外から何かにカチャッと開けられてしまったあの部屋だ。怖くて一瞬は固まったけれど、「ああ、最初から鍵をかけなければいいんだ」と気が付いてから、その安い鍵をかけるのを止めた。あれから10年以上、何事も無かったのだが、昨夜久し振りにまた何かが来たようだ。

あれ以来、もうその障子には鍵をかけないことにしたので、それを開けられることはない。なのに今日の明け方、障子の方からカサコソカサコソとしつこく音がして、目が覚めてしまった。指先や爪の先で障子を外側から擦るような音だが、虫が這う音とも違うし、そもそも音が大きい。この音の元が蜘蛛とかなら、多分ご近所に響き渡る悲鳴をあげる大きさだと思うぐらい、遠慮の無いカサコソ音なのだ。何しろ、すっかり眠っていたのに起こされたのだから。

前回の鍵の時は、まだ目を閉じたばかりで眠っていなかったので、障子から聞こえる音に怯え、震えてしまった。頭はハッキリと起きていた分、とにかく怖くて仕方なかった。だが、今回は違う。眠っていたところを、無遠慮に起こされたのだ。今週は仕事も忙しく、エアコントラブルでゆっくり出来なかった疲れもあってヘロヘロになって、やっと布団の上で眠れる至福の時間。それをこんな形で邪魔するなんて!私は猛烈に頭にきて、枕元の懐中電灯をパッとつけて障子を照らした。途端に音は消え、障子には何の影もうつらない。

軽く舌打ちをして、障子を睨みつけてから懐中電灯を消す。すると途端に、またカサコソが始まるではないか!私はますます腹を立てて、即座に懐中電灯を点ける。すると音はピタッと止む。障子を隅から隅まで丁寧に照らしてみたが、変わったところなど何もない。私のイライラは一気に膨れ上がった。
「何やねん、もう!」
私は眠いのだ。疲れているのだ。そして今日は金曜日、朝から仕事に行かなければならない。何が嬉しくて、こんな白々と夜が明け始めた時刻に、どこの誰とも、もしくは何とも分からないヤツに、振り回されなければならないのか。
「ああもう、ウザいわ!」
怒りにまかせて罵りながら、懐中電灯が障子を照らすように置く。試しにもう一度明かりを消してみたが、やはりすぐにカサコソと鳴りかけたので諦めた。このまま懐中電灯を向けておこう。もう朝は近いので、明るくなるまでの辛抱だろう。

案の定、それから朝までは静かだった。懐中電灯を消しても、明るくなってからは何も起こらなかった。それにしても、ずっと何事もなかったのに、なぜ急にまた音がしたのだろう。鍵もかけていないのに……と思ったところでハタと気が付いた。もしかして、障子の穴を塞いだから?

寝室の障子は古く、張り替えもずっとしていないので、穴があいている箇所があった。そこを塞ぐべく、百円均一でふすま補修用の桜形のシールを買ってきて、貼ったばかりなのだ。そんなに粘着力は強くないので、少し重ねながら、しっかりと木枠にかかるようにして貼り付けた。おかげで虫も入らないし、エアコンの風も逃げにくくなって快適だったのだが、これが気に入らなかったのか?それとも、珍しい物を見て、剥がして遊びたくなったのだろうか?

会社で話すと、「うーん、取りあえず殺虫剤でも撒いてみたらどうですか」と言われた。実は私も、懐中電灯を片手に殺虫剤を……と思ったのだが、あいにく手の届く範囲になかったので断念したのだ。多分、虫ではないのだが、何となく「鬱陶しい物を追い払う」には良い気がする。前回の鍵のようには、今回のシールを諦めたくないので、次にカサコソ聞こえたら試してみよう。

それにしても迷惑な話だが、何に対して怒るべきなのか分からない。まあ、古い家なのでいろいろあるのだろうが、どうせなら座敷わらしが宝くじでも当ててくれれば良いのに……と不満タラタラな、寝不足の1日だった。


怖いかも知れない話3は、こちら


いいなと思ったら応援しよう!