本を売って本を買う自転車操業の日々(懐古)
かつて、私はかなりの本を買っていた。中学高校ではお小遣いのほとんどを本を買うことに費やし、大学ではバイト代を注ぎ込んだ。
社会人になっても本を買うことはやめられず、積読の山を築くという栄華を得た。大変な贅沢である。
さて、そんなに本を買っていれば、当然本棚から本が溢れ出す。私は本を買いもするが、本を売りもする。そうでなければ多分、今頃自室に居住スペースは無く、部屋の床が抜けている。
自転車のカゴ一杯に本を詰めて売りに行って、¥5000手に入れてまた本を買って帰ってくる。25年前の古本屋の買取価格は、今よりずっと高かった。売値もそこそこだったからではあるのだけれど。
そうして手に入れた本を読んで、また売って、買って。マネーゲーム的にはジリジリ資金が枯渇していく負け組ではあるが、私の心は満たされていた。本を買うことはマネーゲームではないからだ。
最近なんだかビジネス書ばかりを読んできてしまったけれど、そろそろまた物語を読みたい。読み終わった後の重厚な虚脱感と達成感と充実感を味わいたい。
物語を読んでも、所詮は作り話じゃないか。
そう思ってしまった時期もあるけれど、作り話でしか味わえない含意もあるし、感動もある。いわゆる心の洗濯がしたい時に、物語は打って付けだ。
話が華麗に逸れている。
自転車操業で、私は多くの物語を手に入れてきた。
正直、首を傾げるような作品も幾らかはあったけれど、そのような経験をバネにもっといい作品を選んだりもした。
今は私の本の購買欲は落ちているけれど、本棚には当分読み切れないほどの蓄えがある。
そう、わたしの本棚は、何を隠そう未読本棚なのである。
「本棚を見れば人格が分かるよ☆」などと言われるが、私に至って分かることといえば、
「古典文学に興味があるけどまだ読めていない」
ということだけである。
動画サイトの本棚案内を見ては溜息をつきつつ、でも、読んでない好きな本だけが詰まった本棚は、誰の本棚よりも私にとって魅力的なのだった。うーん、贅沢!
本好きの皆さん、未読本棚、お持ちじゃないですか…? (確信を持った目で)