
「夏への扉」(ロバート・A・ハインライン)
書籍名:「夏への扉」(The Door into Summer)
著者:ロバート・A・ハインライン (Robert A. Heinlein)
ネコデコ価格:200円
棚主ID:2350
書籍に挟んだ解説文
発明家として大成功したダンだが、親友と婚約者に発明も会社も奪われ、コールドスリープで30年後の未来へ飛ばされてしまった。それでも挫けず、欠陥タイムマシンで過去に戻り、タイムパラドックスを避けつつ問題を修復し、また未来へ向かい幸せをつかむ名作SFファンタジー。
前半にちりばめられた辻褄の合わない出来事が、後半ですべて解決されるのが見事。そして、愛猫のピートがなんといっても魅力的。
猫好きにはたまらない、SFの巨匠が描くファンタジー
タイトルの「夏への扉」は、冬嫌いの猫、ペトロニウス(ピート)がダンの手を煩わして探し回っているもの。ピートは、不快な雪で家に閉じ込められる冬でも、たくさんあるドアのどれか一つは夏につながった「夏への扉」であると信じている。親友と婚約者に騙されたダンも、ピート同様「夏への扉」を探して奮闘する、というストーリー。
古いSFなのだけど描写が生き生きとしていて、読み始めるとすぐにダンとピートの世界へ引き込まれる。
猫のピートが活躍するシーンは多くないものの、とても魅力的な存在で、それが猫好きに愛される理由だと思う。
SFといっても、ハードSFと違って小難しい理屈は不要。素敵な物語として楽しめるはず。
余談1
デコ分室室長がこの作品を知ったのは、山下達郎のアルバム「RIDE ON TIME」に収録されていた「夏への扉」(THE DOOR INTO SUMMER)から。SF作家もあるキーボーディストの難波弘之のために作った曲で、作詞は吉田美奈子。歌詞はそれだけだと意味が分かりにくいけれど、小説を読むとその骨子がうまく織り込まれている。大好きな曲で、ライブで聴けたときは感涙もの。
余談2
ハヤカワ文庫のこの版は、福島正実の翻訳が素晴らしい。「この自然な日本語は、どんな英語から訳されたのだろう」と興味を持ち、原書をお茶の水の書泉グランデに取り寄せてもらった(当時、洋書を買うのは面倒だったなぁ)。僕が翻訳という仕事をするようになった切っ掛けの一つがこの本。
新訳版も出ているけれど、僕の中のイメージが壊れそうで、怖くて読めていない。
余談3
初めて自分で飼った猫の1匹は、ペトロニウスと名付けた。この本に登場するピートが好きということもあったし、ハヤカワ文庫版のカバーに描かれた猫に似ていたから。

お買い上げ履歴
2025/2/24