「横浜駅SF」(柞刈湯葉)
書籍名:「横浜駅SF」
著者:柞刈湯葉
ネコデコ価格:800円
棚主ID:2350
書籍に挟んだ解説文
常に工事中で、変形し続けている横浜駅。ついに自己増殖能力を身に付け、本州の99%を横浜駅にしてしまった。人間は駅ナカで生活し、脳に埋め込まれた(Suicaならぬ)Suikaで管理されている。
数少ない非Suika民の若者が、「18きっぷ」で「42番出口」から横浜駅へ侵入し、横浜駅の秘密に立ち向かう近未来SFの怪作。
着想が見事で、ちりばめられた小ネタも楽しい
小学生のころから50年くらい利用しているが、常にどこかで工事が行われ、構造が変わり続ける横浜駅。そんなわけで、「日本のサグラダ・ファミリア」と揶揄されることも。もっとも、本家サグラダ・ファミリアはもう少しで完成するという話もあるので、横浜駅が世界的な未完成の象徴になる日も近い。
そこそこボリュームのある作品だけど、テンポ良く進んでいって飽きずに読み通せるはず。「Suika」「18きっぶ」といった小ネタも楽しいし、ストーリーそのものがしっかりしたSF作品なので満足できる。
迷宮と呼ばれる横浜駅だが
僕が知っているかつての横浜駅は、改札を抜けて構内に入らないと東西の行き来ができず、とても不便だった。今は東西を結ぶ北通路、中央通路、南通路があって使いやすい。ダイヤモンド地下街と中央通路が地下で直接つながったのも便利だし、南北の移動も楽になった。
横浜駅に馴染みのない人に言わせると、迷宮のようらしい。
ただ、横浜駅の全体構造って、南北に鉄道が貫き、左右に商業施設が配置されている、というシンプルなもの。これさえ把握していれば、迷わないと思うんだけどな。
迷宮度は渋谷駅や新宿駅、に及ばないぞ。
渋谷駅は鉄道が2次元方向にも3次元方向にも入り乱れていて、工事中なうえ周囲の街もゴチャゴチャ。地下鉄の銀座線が地上3階にあるっておかしいだろ。新宿駅も絶賛工事中で、いつだか山手線から京王新線へ乗り換えるのに30分くらい彷徨った。
「42番出口」にニヤッとする
「横浜駅SF」への侵入経路は「42番出口」。42という数字にニヤッとしたあなたは友達だ。「銀河ヒッチハイク・ガイド」に登場する「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」が「42」なんだよね。