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「季節のない街」(山本周五郎)

  • 書籍名:「季節のない街」

  • 著者:山本周五郎

  • ネコデコ価格:500円

  • 棚主ID:2350

書籍に挟んだ解説文

作品には明記されていないが、戦後の復興から取り残された、横浜の貧民街がモチーフ。伊勢佐木町から奥に入った阪東橋、吉野町、中村町あたりの雰囲気。

碌でもない人物ばかり登場する。個人的には付き合いたくないが、愛すべき人々。何とも言えない閉塞感、それでも日々暮らしていく人間を描いた名作。

黒澤明は「どですかでん」で、見事に映像化している。

静かだがパワーのある作品

「どですかでん」に衝撃を受け、原作を読まねばと開いた「季節のない街」。まず、黒澤明が原作の設定やエピソードを忠実に映像化していたことに驚いた。違和感なく原作と映画を行き来できる。

個別のストーリーを並べただけなのだけど、全体を貫くテーマがまったくぶれず、小説も映画も強烈なパワーのある作品。

戦後の復興から取り残された横浜の貧民街が舞台と思われる。フィクションなんだけど、かつての日ノ出町から黄金町、阪東橋あたりにかけては、そういう時代だったんだろう。黄金町の一角はすっかりアートの街という感じでお洒落だけれど、「昔は売春宿だったのね」という構造の建物が今もたくさんある。

黒澤明は「天国と地獄」でも横浜を舞台にして、黄金町を麻薬街として描いてた。こちらも傑作サスペンス映画なので、お薦め。

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