ひとりごと「ベビーカステラ」

ベビーカステラの屋台が
甘い匂いで自己主張している
たくさんの記憶を
引き出してくれるお菓子

初詣のときは恋人と
お花見のときは友人と
花火のときは家族と
ベビーカステラは人気者

忘年会をしたあの日もそう
大勢の手から手へ
大きな紙袋がリレーされて
幸せ気分は最高潮

焼きたてふわふわ
湯気たっぷり！

俺のカステラ
クリーム入り！

大当たりを勝ち取ったと
誇らしげに声を張り上げるから
みんな急いで集まったけど
それはただの生焼けだった

顔を真っ赤にして
恥ずかしがるのを
顔を真っ赤にして
大笑いするみんな

何十年たっても
いい思い出
何百回聞いても
バカ笑いするネタ

とても素直な人でした
すごく優しい人でした
あの人のことを知らなくても
この話を知る人は多い

今日もみんなで話したよ
主役がいなくなっても
いい話は語り継がれる
遺影の笑顔はあの日みたいだ

あの人は生き続ける
家族や仲間の記憶の中で
あの人は生き続ける
面白い話の主人公として

みんなの笑顔を引き出す