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「世界でいちばん透きとおった物語」杉井光
題名に惹かれて手にとった。流れるような文章で読みやすい。
推理小説の作家の婚外子 藤阪橙真は校正の仕事をする母と二人暮らし。母を突然なくし、書店バイトで色褪せた日々を過ごしていたら、、、
一度も会ったことのない小説家の父が亡くなった。多くの女性関係があった見知らぬ父への感情はないが、長男と名乗る松方朋晃が現れ、未発表の原稿を探して欲しいと頼まれる。母親の仕事関係の霧子さんが協力してくれて、記憶の影もない父と関係のあった女性に会い、父の姿が形作られてゆく。
母親を捨てた人間の屑と心の中で整理してものが、原稿に辿り着いて崩れ去る。原稿を焼いた強い嫉妬は誰、
主人公の眼の過去の術後に残った謎の症状。デジタル書籍は問題ないが、紙の書籍に違和感が。不器用な父の愛情。作家として作品で繋がりたいという思い。遺稿は失われても、残された題名の「世界でいちばん透きとおった物語」という思いを藤崎橙真が紡ぐ。
亡き人の思いが伝わり、一人ではないと顔を上げればそっと温もりが薫る。