幸せになんかならないで。
襲ったのはたぶん私だった。
泥酔したときにた大好きな人がいたから。
絶対沼らないなんて思ってた。
私も適当に甘やかしてもらえるなら、それでいいと思ったから。
ずるずる。
気付いたころには沼の奥底だった。
◇
この沼が昔の女の子の話をしたとき、私の見たことの無いくらい切ない、半分困ったような笑顔をしてた。
きっとその子に感じていたのはちゃんとした愛だったんだろうね。
奴の好きな子は、
――「ほかの女の子なんて見ないで私以外構わないで!」
って、言えちゃう子。
――「この子のこういうとこかわいくない?大好きだったなぁ。」
って、昔を語る横顔を眺めながら、
どんなに頑張ってもそんなわがままは言えない自分に切なくなった。
あぁ、きっと私はどうあがいても、この人の一時の都合のいいおもちゃでいるのが限界なんだろうな。
悟った。
二人で話した日の夜には一人切なくなって、
やけ酒しながら泣きながらLINEを返す。
最初から終わりのある関係。
その場の快楽を消費するだけの先の無い関係。
◇
この人から彼女の話がLINEで来るたびスマホを投げた。
泣きながら投げた。
私にする彼女の話は愚痴ばかり。やめてよ。聞かさないでよ。
そんなに不満ならどうして私を隣においてくれないの?
元カノの話も、昔のセフレも、他の職場の女の子の話も。
全部聞きたくなかった。
でも、分かってる。
私もこの人の恋人になりたいわけではないんだ。
だって私も所詮、都合よく寂しさを埋めたいだけ。
◇
それでも自ら沼っておいて、苦しくてストーリーミュートにする私。
隣で勝手に気持ちよさそうに寝てる中、私は天井を見つめて、
あぁいつまでこうしていられるのかなぁって一人哀しさに浸ってた。
◇
バイト中、思わず見えたラインの通知にそのまま意識が遠くなった。
「婚約指輪買う」
ねぇ、結婚するんじゃん。もうだめじゃん。
私に嬉しそうに報告するんだね。
「本気にならなそうなところが好きだからね。」
うるさい。私が本気になってないと、本当にこの人は思ってるんだろうか。
でも傍においてほしくて。この言葉はずっと私の呪いになった。
いつだってヤツの良き感情のごみ袋になってあげた。
私のわがままは言わない。
会いたいと言われれば会いに行く。
そうして話を聞いて、甘い時間を過ごして解散。
だって大好きだもん。
◇
ね、辛かったよ。お兄さんのために何時間泣いたよ。
でも一緒にいる時間、やっぱり楽しかったのよ。
もう、終わり。
今まで何人の女の子で遊んできたのか知らないけれど、せめて遊んだ女の子は私で最後にしてほしい。どうか。
自分でプロポーズした彼女、大切にしてください。
私は別の女の子と幸せになるお兄さんを見たくない。
いま、となりで気持ちよさそうに寝ている
お兄さんの首を絞めてしまったら
最後の記憶は私になる…?
そんなこと、しないけど…。
お願い、幸せになんかならないで。