涙が上手く出せなくなった。
もう浪人してから一年半、ずっと心は限界で悲鳴をあげている。
去年はその重圧に耐えられなくなっておかしくなってしまった。そうして浪人生なのに勉強ができなくなってしまった訳だけれど、私には必要な一年だったと、強がりじゃなく言える。
自分の精神的な底を知った。知らず知らずに否定的な思考回路に陥る癖も。もう克服したはずだった自己肯定感の低さが根を張って染み付いていたことも。しんどくなるほど口で強がり言って余計に自分を縛っていたことも。いろんなことを知った。
自分で夢を叶えるためにと茨の道を選んだのに、毎朝起きる度に絶望が溢れる日々はあまりに苦しかった。それでも、そんな事態に直面したおかげで、ありとあらゆる自分の負の側面に全力で向き合った。そしてこの先同じように辛くならないように。
だから今年は大丈夫なんだって思ってた。
違う、大丈夫な自信はないけれど、そういい聞かせてきた。
毎日襲いくる不安と孤独に蓋をするかのように無理やり頭もたげて、今日も私は偉いと褒めて、夢に近づいてると自分を鼓舞して、そうして無我夢中で机に向かう。
バイトに行けば、誰かには会える。私は人が好きだから、誰かと顔を合わせるだけでにこにこできる。そうしていたら、少しは心が上を向く。
でもやっぱりそれも無理してる。
根底には薄暗いどうしようもできない何かがずっとある。大好きな人達にあっても、美味しいものを食べても、思いっきり体を動かしても、全力で勉強したとしても、それは絶対なくならない。私が合格するまでずっと膨らみ続けるんだと思う。
やっぱり、しんどい。
好きなことを、自分が決めて、自分の素敵な未来のためにやってるはずなのに。なんて思うから余計に。
頑張るために取り繕ってる自分と、闇にいる薄暗い自分との乖離がどんどん大きくなっていく感じがする。
家族も友達も恩師もみんな応援してくれているし、見守ってくれている。
でも私は直接弱音を吐けない。皆に会うとやっぱり笑顔で過ごしてしまうから。それはもうどうしようもない。
本当は、誰かに直接辛さを吐き出したい。そうして思いっきり泣きたいの。
一人で辛くなって涙が溢れることなんてたくさんある。でもそれじゃあ思いっきり泣けないの。
泣いたら少しは軽くなる。昔から私は人と話すとよく泣いてしまう。特に自分の話をすると。でもそうして感情を逃がしてきたのも知ってる。でもそんな風に甘えられる距離感の人が今はいない。
高三の現役受験生の頃は、お世話になっていた小さな塾に、仲が良いわけではないけれどとても信頼できる先生がいた。
一対一で話す度に私は泣きだしてしまっていたけれど、そうして少しずつ不安を軽くしていたんだと思う。相手は何人もの受験生を見てきたプロで、何を取り繕っても仕方がないと思えたし、言い方はなんだが、講師が受験生を支えるそのサービス料を払っているのだから、そこに気遣いなくすがっていられたんだと思う。もちろんこの先生の人柄があまりに素敵だったことは大前提だけれども。
だから今年は面倒見の良い担任制が売りの予備校の小さな衛星校に所属した。もとより宅浪前提なので講座はほんの少ししかとっていないけれど、教室にいたスタッフ達の人柄の良さにひかれたから。
それなのに、やっぱり私は思うように感情を吐き出せない。少し前の私ならこの素敵なスタッフ達を前にに思う存分泣いて喋って気持ちを整理できたろうに。感情を外に吐き出すためのハードルが自分のなかでなんだか高くなった気がする。でも貯蓄許容量は増えてないから耐えられない。
しんどい辛い。誰かと話して思いっきり泣いてしまいたい。
でももう本当に、受かるしかないんだろうなぁ。