耳がハチの巣という衝撃
タイトルが不穏…
嫌な予感がする方はこの先読まないほうが無難です。そこまで気持ち悪くないですが(たぶん)
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高校を卒業してすぐ、自分でピアスの穴を開けました。右耳に1つ、左耳に2つ。
いろいろと脅かされていたので慎重に、そして過保護すぎるくらい大切にしました。毎日消毒したり軟膏を塗ったりして。
それが良くなかったんでしょうか。
左の穴が1つだけ、なかなか自立しませんでした(いつまでもなんだか傷口っぽい)。
仕方がないのでその穴だけシリコンのピアスにしていましたが、やっぱりお洒落がしたい。右耳と対になる位置にある傷の穴にだって、お洒落なピアスをぶら下げたい。下げちゃお。
平気でした。そのうち傷だった穴は中に皮ができ、もう消毒も軟膏もいらない立派な穴です。
大きいリング状のピアスがしたい
それまではキャッチがあるストレートなタイプのものばかりしていましたが、リング状のピアスは耳の穴の部分がゆるやかなカーブになっていて
「え、これ入れるとき引っかからない?」
と思ったものでしたが、どうしてもこのデザインがいい。やるしかないよ、他のピアスで妥協なんてできないでしょうと腹をくくり、ゴリゴリ違和感を感じつつ装着、やっぱり大きいリングピアスってかわいいなぁ!ということでリングピアスもクリアできたのでした。
毎回なんだか引っかかりを感じつつも、それでもちゃんと出口から出てきてるから大丈夫でしょう、と思っていたある日、左耳が腫れていることに気が付きました。
慌てた私はシリコンピアスに戻し、消毒、軟膏と手厚い看護をしましたが耳は腫れたままです。半泣きでピアスに強い(?)耳鼻科を探し出し、神奈川県から渋谷の某有名耳鼻科までやって来ました。
こ、ここは…
雑居ビルの最上階にある耳鼻科は、ピアスの穴開けからピアスのトラブルまで、ピアスをメインに謳っているだけあって若い女性で溢れかえっており、廊下にまで長い列が続いていました。
午後一番で行ったのに、私が呼ばれる頃には空が暗くなりかけていました。先生の白衣が薄汚れていて、引き返したい衝動に駆られましたがもう遅い。先生は開口一番、
緊急手術!
と言い、えっ?となる私をよそにテキパキ手術台を用意する看護師さんたち。さすが、あの人数を毎日こなしているだけあって仕事が早い。
心の準備もできないまま手術台に横になり、左耳に麻酔を打たれ、布をかけられ、ハサミで耳をサクサク切除する音だけが聞こえる(なんせ鼓膜が近いのでよく聞こえる)。
あっと言う間に処置が終わって、呆然とする私に事後報告をする先生の説明によると、
入り口は一つ、出口は無数、耳たぶが分厚いから中でハチの巣状態になっていた。出口の部分をえぐる形で切除、穴は残しているのでそのうちまたピアスできるでしょう。
たぶんそんなにたいした処置ではなかったのに、先生の「緊急手術!」に驚いた私は涙をボロボロ流しながら、ぼんやり先生の話を聞いていました。
先生が、「怖かったね〜」と慰めてくれましたが、私の心は無でした。
ざわつく待合室
ボロボロ泣きながら看護師さんに付き添われて出てきた私の姿に、待合室のうら若き乙女たちがざわつくのを感じました。
みんな、これから始まるピアスライフ、新しい自分に期待で胸を膨らませていたのに、悲愴感たっぷりな人間が診察室から出てきたらドン引きするのも仕方がないでしょう。でもいまさら笑ってみせるのも無理があるので、そのまま泣いていました。
帰り道、渋谷の街でやたらと視線を感じ、
さっきまでボロ泣きだったから、泣き顔だって気付かれたのかな、まだ目が腫れているのかな、なんて思っていたら違いました。
外はもう暗いですから、電車の窓ガラスに映った自分の姿で納得しました。耳がでっかくなっていたのです。
包帯でぐるぐるにされた耳は3倍くらい大きくなり、目立たないようにと使われた肌色のサージカルテープは、遠くから見れば耳そのものでした。髪の毛で隠してたつもりでしたが隠しきれるわけなどなく、ひょっこり飛び出したでかい耳が通行人の視線を集めていたようでした。
「いいんだ、渋谷は地元じゃない…」
そう言い聞かせて帰路につくのでした。
現在の耳
しっかりとしたピアスホールが形成され、放置しても二度と塞がることは無いでしょう。
よく見ると左右で耳たぶの大きさが違います。すこし肉を抉っただけですが、そのぶん縮んだようです。厚さは全然違います。右耳は分厚すぎて、華奢なピアスは装着できません(手術した左耳の方がいい感じです)
ここまで読んでくださりありがとうございました。